『オーディオは銭だ!』
『100万円以下の物は俺に勧めるな!』
と、言って、はばからないのが寺島氏です。
冗談とも本気とも取れます。
一方、「オーディは腕だ!」
と、真っ向から異を唱えるカイザー!
危険なバトルを予感させるイベントであります。
当日私が用意した、安さ極まるシステムは・・・
アンプは中国製で元値5万円!
電源タップは台湾製で元値1万円!
”技術還元シリーズ”と銘打ち、
モディファイモデルとして、
ローゼンクランツから販売している物です。
CDプレーヤーは中塚会長から借りました。
スピーカーケーブルに至っては、
Music SpiritのSwingで1メートル650円。
ここまで安い機器でアバンギャルド・デュオを鳴らすのは、
さすがに、メグ始まって以来の事でしょう・・・
しかし、これでバリバリに鳴らしたものだから、
寺島さんも、たまったものではありません。
いきなり、ストレートに近いジャブが飛んで来ました。
『カイザーさんの音は、まとまり過ぎていて面白くない!』
『私なんか、どんな音も三日で飽きてじっとしていられない!』
『もっと、個性のある音にならないものかね?!』
(その言葉も私に対する常套句となり、効き目も弱くなりました)
「飽きるのは、寺島さんの音が良くないからです!」
「個性はアーティストが演じるのであって、
ステレオが個性を演じてはいけません!」
と、このように、私も一歩も引きません。
『言ってくれるじゃないか!』
『そう来なくっちゃ!!』
そこで、評論家の林正儀さんが割って入るかのように、
『古い名盤も良いけど、最近の録音も聴いてみたいよね!』
と、言って、寺島レコードの主役である、
松尾明のディスクを取り出しました。
時として、こうしたオンマイク録音の物は迫力があるように聞こえますが、60年頃の名盤ばかりを演奏した後では、個別録りでコンプレッサーを効かせた音作りがとても不自然です。
セッティングが良くないケースだと、そうしたディスクの方がむしろ良く聞こえたりするものですが、私のようにきちんと合わせたセッテイングだと、時間軸に於ける人工的フェイクが露呈されるのです。
真の迫力とダイナミックレンジとは?
強い音が強く、弱い音が弱く入っている事が絶対です。
弱い音も強く入れた音は強弱の変化に乏しく、
見せ掛けの迫力でしかありません。
『今のような音は、マイクをシンバルに5センチ近くまで近づけて録っている』との説明に、会場の皆さんもその音の違いには改めて驚いたようです。良くも悪くも、色々な音の違いを体験して欲しい! そんな評論家としての思いが現れた一幕でした。
『ところで、カイザーさん!』
『今日の新製品の試聴はどんな曲でやるのかね!』
「それは決まっています!」
「格調高い、エリントンとベイシーの共演盤で行きます」。
『オーディオは個人の好みだ!』
と、寺島さんは仰いますが、
デフォルメが過ぎるのは如何なものでしょう?!
「オーディオの常識を覆す、ルームチューニングを紹介したいと思います」。
部屋の空気にホーン効果を付与するという、Stream Reviverという製品です。簡単に言うと、気圧差を利用した気流の加減速装置であります。これは部屋の空気を根こそぎ動かすので、スピーカーから遠い席の人ほど、生きた音を感じ取って貰えるはずです。
その音の効果の有り無しを実験するには、ビニール袋を被せたり外したりするだけで可能です。その効果に、皆さんは、手品を見ている時のような顔になり、会場は口々に起こる会話で騒がしくなりました。
本当にその場に居合わせているかのような生々しい音なのです。
スリルあり、笑いあり、緊張感ありの、
一部二部合わせての3時間はあっという間に過ぎます。