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赤ちゃんの進化学



 あるお客さんから頂いた「赤ちゃんの進化学」という本を興味を持って読みました。そんな中で幾つか印象に残った内容を書いてみたいと思います。

 「赤ちゃん」の進化学
 医学博士 西成克成 著者


 胎児はお腹の中で5億年の進化をたどる

 何億分の一の精子と卵子が出合って受精卵になり、次々と分裂を繰り返しながら胎児へと成長して行くのは誰もが知っている通りです。

 その途中の段階で、私達の遠い祖先が脊椎動物の始祖として海の中で生を受けた原始魚類に始り、陸に上がった古代魚。そして、鰓(えら)呼吸から肺呼吸へと移った両生類。恐竜として一時代を支配した爬虫類。

 そして、人間に代表される哺乳類に至るまでの5億年の進化の経過と全く同じ変容を、お腹の中にいる十ヶ月の妊娠期間の間になぞるように繰り返すのですが、まるでそれは高速度写真を観るかのごとく遂げていくのです。その進化と変容のスピードを1日当たりに換算してみると、160万年以上のスパンに相当すると言います。


 悪阻(つわり)

 妊娠中に多くの妊婦が悪阻をおぼえますが、これも胎児の成長というべきか、その進化と大いに関係するといいます。その悪阻の時期が生物の5億年の進化のステージの、どの時代に相当するかを換算してみると約4億年前になります。

 その時代の地球には大変動が起こり、海が浅くなって干上がった陸地に取り残された古代魚は、空気中の酸素呼吸を余儀なくされます。重力が水中の6倍もある過酷な環境で、苦しみながらも空気呼吸に対応し得る肺が次第に出来上がってきたのです。

 この両生類へと繋がる進化の苦しみと同じ事が、お腹の中の胎児にも再び起こっていて、その追体験を母親も同じように共有しているのが悪阻だというのです。この時期に流産の危険が付きまとうのはそれが理由だそうです。


 赤ちゃんは人間以前の生き物

 赤ちゃんに出来て大人に出来ない事があります。それは、お乳を呑みながら呼吸することです。それは動物と同じように気道と食道が完全に独立しているから出来るのですが、立って歩き始める頃からそれら二つが次第に繋がるのだそうです。

 だから、二足歩行出来るようになるまでの赤ちゃんは、人間になる一歩手前の生き物なのです。それまでは泣くだけですが、肺の空気を口を通して出せるようになる頃から喋り始める事が出来るのだそうです。

 ここが四足動物と人間の大きく違うところです。空気を鼻からしか抜けない豚や馬は”ブーブー”とか、”ヒヒーン”としか声が出ないのです。

 目から鱗(うろこ)のような内容ばかりです。


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