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第10回 音の物差し「カイザーゲージ」 
A&Vvillage 9月号 第63号 P66〜P67

貝崎静雄(カイザーサウンド)

  ● 前書き

 オーディオの歴史の中で技術革新によって目を見張るような発展を遂げて来たのは周知の事実ですが、「音のカラクリ」を研究するようになった私の立場として、どうしても気になる事がありました。

 それは、あまりにも先を急ぐがあまりに基礎研究がおろそかにされて来たと思える点です。市場が新しい技術を期待する面もありますので、それはそれで仕方の無い部分もあるかなとは思います。また私達がそれによって受けた恩恵の大きさも充分に理解しているつもりでもあります。

 しかし、何事に於いても大切な基礎が出来ていなければ出て来る結果にムラが生じます。また、私のように誰よりも良い音で音楽を楽しみたいという欲求の強い人間にとりましては、高度な事を期待しますのでどうしても既存の物では満足が出来なくなるのです。

 そうした状況であったからこそ、音や音楽のルーツの部分を研究出来るようになった訳ですから、逆に感謝をしている部分もあるのです。それらの集大成の結果となって現れたのが今回発売した「カイザーゲージ」なのです。

 音を測る物差しとして誕生したこの「カイザーゲージ」には、色々な事象の心理が潜んでいる事が使っている内に解って来つつあります。そこで今回は、音楽の感動や感情を表現する「カイザーウェーブ」についてお話してみたいと思います。

   ● 体内波動と音楽の波動が呼応し合った瞬間

 第9回目の「電気の時間軸の研究」のところで、スピーカーアタッチメントの長さ決めをしている際に、『身体に電気が走ったように「ピタッ」と音が決まったのです。その時の長さが「52.5ミリ」でした』。と表現してあります。そうです、全てはその時から始まったのです。

 私の生命体としての体内波動と音楽の波動が呼応し合った瞬間でした。そして、「音楽エネルギーの波動パターン」=(カイザーウェーブ)の存在を確信するに至ったのです。また、その最終決定になったのは、ピアノの最高音部の平均基本弦長が52.5ミリという話を聞いた時でした。

 何故ならば、88の鍵盤から成るピアノという楽器は、それぞれがある単独の絶対音階しか出せないからです。また反面、最大10本の指で同時に違う音を出すことが出来る多芸さと、複雑な表現の可能性も併せ持っています。それ故に楽器の王様と呼ばれるのでしょう。

高音域は理屈の世界


 その全ての音の正確さを表す元になっている長さが52.5ミリ(0.05kaiser)なのです。その事がステレオに於いては何を意味するものなのかといいますと、52.5ミリ(0.05kaiser)はツイーターユニットが受け持つ高音であると定義付けられないでしょうか。それは、誰も変えることの出来ない正確さが全ての理屈の世界です。デジタルの世界でいいますと正確な時を刻むクロックに相当します。

中音域は魂(感情)の世界


 人間は感情の生き物といわれるように人によって好みに大きな違いがあります。これは理屈とは正反対の世界です。その感情を表すのが52.5ミリ(0.05kaiser)の3倍長である157.5ミリ(0.15kaiser)の長さです。理屈の世界と理屈抜きの世界が重なった時に初めて人は音が良いと感じるのです。

 すなわち中立な立場であり、全てを表現出来るニュートラル状態なのです。「カイザーウェーブ」で見ますと”赤い波”と”青い波”の重なったところです。スピーカーで表現しますと、ツイーターユニットとミッドレンジユニットの位相がピッタリ合った状態をイメージして頂くと良いでしょう。

低音域は肉体(エネルギー)の世界


 魂を表す青い波の6倍長のところに力強い音を生み出す、健康で均整のとれた肉体(エネルギー)の世界があります。すなわち、157.5ミリ(0.15kaiser)X6=945ミリ9.5kaiser⇒(0.9kaiser)が高・中・低とエネルギーバランスのとれた理想の長さということになります。

色即是空の音の世界


 真に私が求める音楽世界は、9.5kaiser⇒(0.9kaiser)ピッチのオーディオシステムで奏でられるものです。それを具体的に説明いたしますと、「若い音」、「渋い音」、「優しい音」、「厳しい音」、「老・若・男・女」の真ん中のバランスの音という事になります。全てがあるがままにある事なんです。言い換えれば、有ると言えば有る、無いと言えば無い、色即是空の音の世界です。

  ● '03/7月オーディオワールドに於けるデモ

一世一代の私のデモンストレーション


 二日目土曜日の自分のブースでのデモを終えた後、ローカルメールのコーナーで「カイザーゲージ」を使ったデモンストレーションを行いました。説明を始めた時点では10人そこそこでしたが、少しずつ聴衆が増え最後には40〜50人近くまでになっておりました。

 この度のイベントでの最後のデモになりますので、ありったけのエネルギーを絞り出しての熱の入った説明になりました。今までの中でも1〜2に入るものだったでしょう。そんな私の気合に引きづり込まれるようにして、会場は興奮のルツボと化したのです。

ケーブルの長さによる音の違いの実験


 使用しているスピーカーはアッシャーのS-520、ペアーで28.000円という小型の2ウェイモデル。先ず私が持参したスペース&タイムのクララというスピーカーケーブルを使った、「音の良い長さ」と「音の悪い長さ」の実験から始めます。

 最初にいきなり、最高に音の良い長さである1.8カイザー(189p)で聴いて貰います。その音の凄さに驚いた皆さんは一気に私の話の虜になったようです。次に、ごく当たり前に売られている2mの物で聴いて貰うと、音の悪さに会場はしらけてしまったのです。

音の良い長さの単位の呼称は?


 日本で買えば「メートル」という単位で、アメリカで買えば「フィート」という単位で、イギリスで買えばおそらく「ヤード」という単位で切り売りされているのでしょう。こうして、その国で採用されている普段使い慣れた単位で計っているに過ぎないのです。

一定のピッチ(52.5mm)でウェーブ状の法則性を持っている


 音といえば長さで変化するという事ぐらいは誰もが知っている初歩中の初歩のはずです。それが長いステレオの歴史の中で検証されずに来た事そのものが今となっては不思議でなりません。そうです!、世界の誰もが「音の良い長さ」と、「悪い長さ」の関係を解明出来なかったのです。

 長さによって音が変わるという事は漠然とは言われて来ておりました。しかし、「カイザーゲージ」のように、ある一定のピッチ(52.5mm)の法則性を持ってウェーブ状に繰返しているという事は明確にされませんでした。

長くなっても音が良くなる事がある


 次に2mのすぐ近くで音の良い長さのケーブルを聴いて貰うことにします。1.95カイザー(204.75cm)です。5センチ弱長くなったケーブルで聴いて貰う訳です。直流抵抗という考え方からしますと、長くなればなるほど不利という考え方が常識です。長くなっても音が良くなるポイントがあるという事実が証明出来れば、固定観念を捨てて貰うには一番の特効薬のはずです。

 さて、その肝心な音ですが如何だったでしょう?!。先ほど2mのケーブルでしらけてしまった空気が、今度は一変して感動の顔!、顔!、顔!になったのです。会場中が恵比須顔です。

空間の時間軸の調整


 ここでもう一つ追い討ちをかけるように、前後の「カイザーウェーブ」の調整です。先ず最初に青い波である157.5ミリの半波長分前に出した音と、後ろに下げた音を確認して貰います。さらに、その半分というように、こうしてキメ細かく追い込んで行くと、見る見る音楽の喜びを感じるようになってくるのです。

 また、両スピーカー間の間隔も中心軸で1.8カイザー(189p)に合わせます。これで、もう鬼に金棒です。誰が聴いても良い音は良いのです。そこで私が、皆さんにどの状態の音が良かったか?挙手を求めますと、全員が良いと感じる音が同じになったのでした。皆さんの嬉しそうな顔を確認した私は次の作戦に出ます。

部屋のどこで聴いても変わらない音楽の感動


 最高潮に達した会場の空気を利用して、「それでは皆さん!席を立って、部屋中を歩いてみてください」。「また、廊下の外に出て、この音の浸透具合を確かめて下さい」。「どこまでも音楽が、”カイザーウェーブ”に乗って届いているはずです」。「これは、音のピークもディップも無いからなのです」。「こうしたプレーンな平行面を持った壁構造でも、フラッターエコーとは無縁の世界です」。

A&Vvillage 9月号 第63号 P66〜P67に掲載されています。

 お詫び

 A&Vvillage 9月号 第63号の中の重要なところで誤りがありましたので訂正させていただきます。
その誤りのところは赤い字の部分です。


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