トップ>情報>音のカラクリ>第11回 高度なセッティング技術 A&Vvillage 11月号 第64号 P68〜P69
第11回 高度なセッティング技術 |
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貝崎静雄(カイザーサウンド) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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● 物を中心に発展したいびつな歴史 過去を振り返ってみましても、どのメーカーの何の製品が音が良いといった物の情報は数え切れないほどあるのですが、主語が「誰が」、「どの店が」といった形での情報は不思議と言っていいほど全く皆無です。従って物オンリーにこの業界はいびつに発展してきたわけで、今そのつけが一気に噴出しているようです。これには情報の発信側としては大いに反省すべきだと思います。 オーディオファイルはしこたま物の買い替えを繰り返す羽目になり、どうしたら良い音になるのか?途方にくれているのが現状でしょう。私の場合は物作りをしながら小売の最先端に長くいますので、皮膚感覚でそうした空気が手に取るように分かるのです。また、お客さんから音の相談を受けて訪問してみますと、大体は良いのですが、如何せん我流ですから基本がシッカリと出来ていません。従って、音楽の感動につながる道を見つけ出す次の可能性が極端に少ないのです。 目に見えない技術にはなかなか金を払おうとしないのがこの国の良くないところと言われていますが、払うに値しない技術しかなかったら、これまた払おうにも払うことは出来ません。どっちもどっちではありますが、今正に、双方共にそのことに眼を向け合う時です。 音楽好きの願いはただ一つ、「良い音で音楽を聴きたい!」に尽きるのではないでしょうか?。このシンプルな願いが叶えられていないから、いつまでも悶々とした気持ちになるのです。とにかくオーディオ業界にはこのすれ違いが多すぎます。この問題にどれだけの人間が危機を感じ、どのようなアクションを起していると言えるのでしょうか?。 ● 育つか?銭の取れるセッティングのプロ 今こそトータルで良い音をプロデュース出来る、セッティングのプロが育たなかったらこの業界の将来はないでしょう。そのさきがけとして、今年に入って私が特に力を入れているのが有料クリニックです。地道な啓蒙活動を通して口コミを中心に徐々に利用客が増えてきております。 その中心となるのが何と言ってもスピーカーのセッティングです。もちろんこの春に発売した「カイザーゲージ」を使ってやるのですが、これもコンベックスを引き出せば、一発で測れて良い音が手に入るわけではありません。やはり良い音を聞き分ける耳が必要なのです。 カイザーゲージによって部屋とスピーカーとの理想の位置関係さえ決まればしめたものです。しかし、これが決まっていないと何をやっても先で上手く行きませんので、それだけは肝に命じておいて頂きたいと思います。また、カイザーゲージについては、次号でもう一度おさらいの意味も込めて詳しく取り上げるつもりですので今回は省かせてもらいます。 |
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● 新しいセッティング技術の開発 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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第9号で少し触れたことですが、敢えてケーブルのループを作って配線するといった技術です。巻きの癖の付いているケーブルはその癖に従って這わしてやったり、ループを敢えて作って結線してやるのです。言い換えれば「ケーブルに尋ねる」といった感覚です。その時の注意は信号の流れる方向に対して、上に、外側に抜いてやるのです。右巻き左巻きについては実際にやって音の良い方に決めてください。 |
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電源タップに各機器を結線する場合、インレット側に近いところから信号の流れる機器の順に結線してやる技術です。その時に各ACケーブルの長さを調べ、短い物を信号の上手に持ってきて次第に長いケーブルにした上で結線してやるのです。すると歩幅が伸びる感じで音に加速度がついてくるのです。間違っても長い物から短い物にならないようにしてください、詰まった音になります。 |
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これは今までのデモンストレーション等を通じ、多くの方達にレクチャーしてきましたので出来るようになった方もおられます。ただこれも細かく言うと、マグネットの方向と振動板の方向等いくつかの組み合わせによって決まるので、やはりその感覚を身につけるには相当の熟練を要する技術であることには間違いありません。 この最近ではB&W、WILSON等一部のハイエンドメーカーでは完璧にこの技術を導入出来ているのには驚きです。ついこの間まではどこのメーカーも出来ていなかったのです。手前味噌かもしれませんが、「ローゼンクランツのウェブを見て研究しているのかなぁ・・・」と思ったりもしています。いずれにしても品質管理が向上し左右完璧にエネルギーバランスの取れた性能の良いスピーカーで音楽が聴けるようになるのは、音楽愛好家やオーディオファイルにとって嬉ばしい事です。 |
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この技術は誰にでも直ぐに出来るものではありませんので、ご自分でなさるのは控えた方が懸命です。スピーカーユニットのネジの性能を調べた上で、音楽振動が流れやすいように組み替えてやる特殊な技術です。もちろんこの時に締めるネジのトルクも、その流れに沿ってグラデーションを持たした上で組み上げる正に職人芸です。 この手法を取り入れたら振動の流れが良くないといわれているMDF製のスピーカーでも、アタック音に対して瞬時に反応し、凄い速さで立ち上がるように変身します。また、各ユニット間のハーモニーが見違えるように揃い、更に音の消え際においては今まで聞こえなかった微弱音まで聞き取れるようになります。流れが良くなるということは音楽の感情表現が豊かになるのです。 スピーカーのみではなく、ネジを使って組み立てられている物なら何でもこの技術を利用することが出来るのです。しかし、何と言ってもスピーカーは最後に音楽に変わるところですから、その効果が一番大きいのは言うまでもありません。貴方のスピーカーも「加速度組み立て」技術を導入されてみては如何でしょうか?。 ローカルメールオーダーで販売しております、アッシャーS-520のスピーカーにも、こうした新しい技術を盛り込んだ「カイザーモディファイ仕様、KZA-1=60,000円(ペアー)」としてお求め頂く事が出来ます。このスピーカーは小さな巨人と言ってもよく、物凄い性能のスピーカーに変身しております。エンゼルポケットに是非聴きに行ってみて下さい。 |
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● 「加速度組み立て」を導入されたお客さんの声 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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この時点での音は、切り札のインシュレーターが残っているとはいえ、正直な所、?で一瞬不安な気持ちがよぎりました。しかしここからが、カイザーさんの世界一の腕の見せ所でありました。カイザーゲージにより、前後、左右の位置を調整し、いい鳴り方になりました。 更にウーハー2個の取り付け角度の修正と最新のノウハウである取り付けネジを順番付けしてからトルクを調整しながら締めたことにより、更に音が2ランクアップしました。時間のかかる微妙な作業(神業!)でしたが、ある意味これが今回一番効いた様な気がしています。 この後、カイザーさんが「このスピーカーを持っている人の中では、世界で一番いい音がするはず」と言われましたが、ディナを信じてきた私にとっては嬉しい限りです。つづいて、SPケーブルに使用していたバナナプラグを止め、直付け(アンプ、SP両方)し、アンプの電源ケーブルの変更により正に、別物の鳴り方になりました。 最後にインシュレーターを使用したことにより、10年鳴らせなかったディナ、世間で鳴らない物の代名詞のように言われているディナがたった数時間でストレスなく、気持ちよく鳴り出し、時間が経つにつれ低音も出てくる様になり、正にカイザーさんの技に嘘、偽りなしでありました。部屋その他のせいにしないで、与えられた情況の中で勝負するという姿勢で、正に真剣勝負をして頂きました。 |
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貝崎さんを自宅に招くにあたり、私には最初大きな戸惑いがありました。それは他でもなく「オーディオは自分自身で調整してこそのもの・・・」といった考えが強くあったからなのです。そして、それはほとんど全てのオーディオファイルに共通した考えだと思います。 ところが、今回貝崎さんの訪問を受け、私の考えは少し変わりました。いや、柔軟になったとでも言うのでしょうか。根底の部分は今でも「自身で」の考えに違いはありません。ただ、私は今回の訪問で貝崎さんに教えていただいた様々なノウハウの中で、私は自分の中で、自分ができる事とできない事の明確な”線引き”ができたように思うのです。 「できる事」は私のオーディオ人生の中で今後も活用しうる莫大な財産となったと言っても過言ではありません。また「できない事」は少々オカルトっぽい(失礼、俄に信じがたいという意味で)所はありますが、結局のところ、全ては結果(演奏される音楽)が物語っていました。 その卓越した技の数々、素直にこれは「認めざるを得ない事実」としか言いようがありません。いろいろ感じるところはあるのですが、前向きに考えるのみです。貝崎さんに教えていただいたこと、見せていただいたことのうち、そのうち3割だけでも自分の血となり肉となればよいと思います。 最後に、この私の文を読んでいる方に言いたい。もしあなたがオーディオに対して貪欲であるのならば、貝崎さんの訪問から必ず何かを得られるものと思う。自分にプラスな部分だけを得ればよく、マイナスな部分は無視して捨てればよいだけのことだ。 オーディオは行動し考えることに意味があるのだとよく言われるが、彼とのコンタクトはまさにそうした好機なのではなかろうか。私はそうした志を生涯忘れたくないと思う。 |
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スピーカースタンドを分解し、全ての部品について上下、前後、左右の方向を指示して組み立てました。そしてセンタースピーカーの台も同じように組み直しました。メインスピーカーとセンタースピーカーのネジも貝崎さんによって、音に良い方向性とネジの順番を調べて取り付けてもらいました。 とりあえずここで音をだしてみました。すると、なんと大変抜けの良い美くしくて広がりのある音になりました。もう私は頬が緩みっぱなしでした。もう充分鳴っているのでインシュレータ無しでも行けると思ったのですが、既に持っていたインシュレーターPB-DADDYと今日注文したばかりの「ナイアガラJr.」を入れました。 さらにスーッと、鎖から解き放たれたかのように音楽が鳴り出しました。本当に貝崎さんと出会えてよかったと思いました。私の友達も今まではヌケの悪いキンキンした音だから、あんたのB&Wは聞きたくないと言っていて、カイザーさんも信用しないと言っていたのにどうしたことでしょー。この音を聴いた瞬間、『これなら聴ける、もう認めるよ!』と言ってくれた時には本当にうれしかったです。 |
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A&Vvillage 11月号 第64号 P68〜P69に掲載されています。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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