トップ情報音のカラクリ第17回 音と音楽の違い・・・その4

第17回 音と音楽の違い・・・その4

 音楽も会話もテンポと抑揚が命

 音楽はテンポ良くリズミカルに演奏されなければ聞いていて楽しくありません。解りやすい例えでは、教壇に立つ先生の事を思い出してみて下さい。どなたも同じような経験を必ずしているはずです。話し方が一本調子で声に強弱やメリハリが無く顔の表情も乏しい先生の授業は面白くありませんよね。特に日本語には強いアクセントがありませんので、「どの部分が大切なのか?」、「主題は何なのか?」が、日本人同士でさえ解りにくいのです。音楽を楽しむ為の道具であるオーディオ機器やアクセサリーに関してもそんな風に感じさせる物は珍しくありません。

 それとは反対に誰もが興味を惹くように、表情豊かに話してくれる先生の授業は楽しく、目を輝かせ、膝を乗り出すようにして一生懸命になれたものです。そうですね、その秘密はどこにあるのかを私なりに考えてみますと、どうやら魅力ある話し方には音楽と同じように波のような周期性をもっているように思います。声を小さく引き気味にゆっくりと話したかと思うと、次にはテンポを上げ、次第に声も大きくなって、何かが起こるのではないか?と聞き手の意識を覚醒するように働きかけます。この差は大きいですよね!・・・。話し上手な人はまるで交響曲を演奏しているかのようです。

 音の原理原則の核になる部分にメスを入れる

 味気ない言い方ではありますが、音楽の電気信号をスピーカーを使って音楽振動に変換して、私達は音楽を楽しんでいるわけです。また、その振動の流れ方や反射の仕方によって大きく音楽の良し悪しの違いを感じます。それは無限といってもよく、あらゆる要素の複雑な絡み合いによるものです。例えばスピーカーの箱の寸法比や各コンポーネントの電気回路、そして筐体構造、また部屋の作りやそこに使われている材料の違い、はたまた家財道具の影響によって生じたりします。  

 気の遠くなるような数のファクターによって成り立っているその要因を、「幹」、「枝」、「葉」という風に整理整頓して考えなければ、糸は次第にもつれてしまいます。その為に「音のカラクリ」と題して地道に研究した事を、公開し発表しているのがこの連載なのです。

 そのテーマはどんなシステムであっても、こうした条件が構築されれば必ずこうなるといった、原理原則の核になる部分にメスを入れたいのです。言い換えますと、良くも悪くもどんな音でも思いのままに操れるという事でもありますし、「敵を知れば百戦危うからず」とも言えますでしょうか。その具現化の一つが、ある一定の長さの周期性を持って音が良くなったり悪くなったりを繰り返す「カイザーゲージ」の発表なのです。

 ローゼンクランツ製品にはそれらの要素がタップリ

 PB-REXシリーズのように平面波動だけでは強弱やインパクトには良いのですが、熱気みたいな部分までになるとまだまだやる事があります。インシュレーターのPB-BOSSシリーズに採用している表面のディンプル加工も、実は音楽に一定の「周期性」と「うねりや抑揚」を生み出す効果を狙っての事なのです。「歯と歯茎の構造」をメカニズムとして取り入れたインシュレーターは発売以来10年近くになろうとしていますが、このようにして少しずつ音楽性の高いものへと進化してきております。


 そのBOSSのディンプルにしましても、下で支えるピラミッド形状をしたオスとその上に乗るメスとではパターンが違うのです。オスは中心から1、5、10ですが、メスに関しては1、6、12です。すなわち5と6の組み合わせから成っております。

 イメージとしては「攻め」と「防御」にあります。6角形はお互いに相対する平行面を持っており、振動が内部留保されます。1辺の中心に振幅のピークがあり、振動をその中心に集めて減衰させる効果があります。その集めた振動エネルギーを105度のピラミッドで受けた後に、今度は星のきらめきの如く拡散効果を持つ5角形パターンのディンプルによってエネルギーの増大効果を高めてやるのです。

 イルカの泳ぎに似たディンプルパターンの波動

 波には「縦波」と「横波」がありますが、このディンプルパターンの波動はイルカの泳ぎに似ていると思います。エイやひらめ類を除いて大半の魚は尾ひれを横に振って泳ぎます。その中でも特に「鯖」や「鰹」や「ブリ」といった回遊魚は大砲の弾のような形をしていてとても速く泳ぐことが出来ます。食物連鎖からしてもそれらを餌にして生きて行く為には、更にもっと速い泳ぎを身に付ける必要があります。その為に編み出されたのがドルフィンキックなのでしょう。種を明かせばローゼンクランツ製品は生き物の進化や特化に目をつけてイメージし設計しているのです。

 また、イルカが立ち泳ぎのような格好をするのを見かけますが、あれは哺乳類としてかつて陸上をかっ歩していた時の動きの名残りだとも言われています。愛嬌のあるイルカがジャンプして輪くぐりする様子を見ていますと、もの凄い力であることが分ります。最近人気が出てきたシンクロナイズドスイミングでも水中からジャンプしますが、それも何人もが力を合わせて持ち上げても足首が水面以上まで出るのがやっとです。それぐらい強い力を彼らは持っているという事になります。

 ディンプルパターンの他にも、勾玉模様、螺旋、ピラミッド等、強いエネルギーを発する形状もいくつかありますが、全体の寸法比との兼ね合いで決まりますので、形だけ取り入れたからといって上手く行くものではありません。バランスが悪いと却ってマイナスに作用する事の方が多くなりますので、使いこなせないのに見よう見真似でやっても逆効果になる場合の方がほとんどです。

 ダイナミックレンジと歌手の声量

 声量のある歌手はマイク無しで広いホールでも末席まで声が届きます。それがマイクやアンプを使っても一向に音楽が届かない人もいます。一言で言えば、これがダイナミックレンジです。喉だけではなく、骨、筋肉、臓器の身体全体をフルに使って空気を突き動かす爆発力の違いなのでしょう。それには人の心の中まで浸透していく力が潜んでいるのです。

 テンポとか抑揚とかにスポットを当て過ぎた感がありますが、オーディオ機器やアクセサリーの基本として一番重要なのはダイナミックレンジの再生にあります。デリケートな微弱音から炸裂する落雷のような凄い音まで瞬時に描き分ける能力です。

 言葉で言うのは簡単ですが、スピーカーに生まれたそのエネルギーを殺がさないで、生かし切る性能と構造を持ったインシュレーターの開発なくして問題解決を図ることは不可能です。それを達成する為のキーワードは二つ、「時間軸」と「エネルギー軸」の両方に対して正確に反応しなければなりません。

 遅れてはいけない!、減ってはいけない!。

 相撲の立会いとそっくりですね。

 波動コントロール

 そうです、それを実現する為に生まれたのが、エネルギーを最大限に取り出す「波動コントロール」という手法なのです。ローゼンクランツのインシュレーター及びスタビライザーを作る際の、最後の音決めに用いられる手法のことです。二つの材料をハンダによって金属結合した後、両者の振動が瞬間に相殺(最大のエネルギーを取り出す)されるポイントを見つけ出すために、溝の掘る深さを1/100mmきざみで違うものを20個ほど試作します。その後、耳でじっくり聴きこみ、次に音の良い順番にドットを打ち、ピンポイントを見つけ出します。その後、折れ線グラフにしたのが下の図です。山の頂きを顕微鏡で見たようなものです。

インシュレーターの1/100mm溝の試し掘り PB-BIGの波動コントロールグラフ

 山と谷を繰り返しながら放物線を描いている様子がよく解ります。正に、波動です。私の長年の研究の結果、音に関するものは全て波動からなっていて、良くなったり、悪くなったりを交互に山の頂きへ上り、そこからまた同じように下って行くのです。ケーブルの長さについてもこの事が当てはまります。したがって定説の短いほど良いというのは誤りです。そのケーブルにとって一番能力を発揮する長さが各々違うのです。重さについても、大きさについても同じことがいえます。結論は丁度良いのが良いという事になります。ですからオーディオという趣味は時間もお金も根気も要るのです。

 ローゼンクランツが進化し続ける理由

 私にとって仕事とは「自分自身との戦いです」。ですから他の何かを目標の対象として考えた事はありません。1回のロットで出来た商品を全て確認して、その時の1番音の良い物をリファレンスとして取っておきます。そして次のロットでは更にそれを上回る物を作る為に穴があくほど眺めたり、考えたりし、必ずある一つの事をテーマとして掲げてトライし、出来上がりを楽しみに待ちます。

 そして全員が前回のリファレンスの性能を越えている事を祈りながら全てをチェックします。そしてこの度のリファレンスをまた次の目標として取っておくのです。このように内部では厳しいレギュラー争いに勝ち抜く為の熾烈な争いが繰り広げられているのです。一つの事に夢中になり飽きることなく出来るのは、小さな子どもと同じように成長したいという本能が、今なお芽生え続けているのだろうと思っています。

 次から次へと新しい考え方や技術を発表し、オーディオ業界をリードして行く心意気を持って、ローゼンクランツは地道な努力と研究を常に怠らず続けて参ります。


A&Vvillage 11月号 第70号 P122〜P123に掲載されています。

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