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第6回 5つの要素が織り成すバランスとハーモニー
A&Vvillage 1月号 第59号 P74〜P75

貝崎静雄(カイザーサウンド)

● 前回までの5回分のまとめ

  1. 材質による音の違い
  1. 形状による音の違い
  1. 色による音の違い
  1. 素材の持つ響きの方向性による音の違い
  1. 構造による音の違い

 前回まではローゼンクランツ製品の物作りを例に挙げながら、「音のカラクリ」の基本を成す5つの要素の説明をしてきました。それを短い言葉で簡単に要約すると、次のようになります。
  • 適切な素材の選択に始まり、
  • その素材の長所をよく知った上で、
  • 理に適った構造設計がなされ、
  • 機能美を持った素晴らしいデザインと
  • 色使いが必要とされます。

 基本理念は「裸の美しさ」

 これらの5つの要素が上手くバランスされて、その上見事なハーモニーを持っていることが私の思う優れた製品の理想像です。ローゼンクランツでは常にこのことを念頭においた物作りを心がけています。基本理念は「裸の美しさ」、もちろん内(心)も外もです。最終的には手にした人の心を捕らえて離さないもので無ければなりません。真に価値のあるものはいつまでも大切にします。そんな風に感じられるものが素晴らしい製品と考えております。

 音の「構造改革」であり、「行政改革」

 この度の「音のカラクリ」をまとめるにあたって、強い自信と確信を持って言えるのは、全て私が体験した事に基づいているからなのです。ですから、「音のカラクリ」とは、私にとってのオーディオにおける「構造改革」であり、「行政改革」なのです。誰もやらないなら、また、誰も出来ないのなら「私がやるしかない」、という不退転の決意で挑んでいる事でもあるのです。

 全ては「波動」から成り立っている

 私自身の性格上、自分でやってみない限りは納得がいかないので、明らかに良くない事と分かっていても、ある事が正しいと証明する為には、わざと失敗作や行き過ぎた物を作る事も多々ありました。それはどうしてかと言いますと、「全ては波動から成り立っている」という事が途中で分かり始めたのが理由なのです。

 「波動」を描きながら放物線を描いている

 X軸とY軸に対して右肩上がりの正比例直線のように、だんだんと音が良くなって行くのなら誰にでも理解しやすいのですが、良くなろうとしては悪くなる。また、良くなろうとしては悪くなるを繰り返すのです。

 しかし、その繰り返しの中にも1回、1回と徐々には良くなっているのです。そして、ある所をピークに、今度は、次第、次第に悪くなっては良くなるという、下りの波に変わって行くのです。すなわち、良い所の両端に悪い所があるという事が分かったのです。

 「固体」、「液体」、「気体」すべてがリンクしている

 私の実験では、「物体の振動」に於いても、「電気の流れ」に於いても、「空気の波動」に於いても全く同じ現象なのです。まだ、「水」に於いては充分な実験をしておりませんが、おそらく、私の直感では同じだと見ています。上に書いた文字の中には目に見えない「電気」と「空気」に『気』という文字が使われています。すなわち、気とはエネルギーの事を指していると思えば理解に結びつきやすいのではないでしょうか。

 これら三者の一連の関連性、すなわち「波動」ですが、それが、とりもなおさず音の良い長さの単位1kaiser=105ミリ(短い波で52,5、長い波で157,5)と私はにらんでおります。もちろん、水の分子の結合角度が105度というのは、今まで口を酸っぱくして喋ってきました。この数字が全ての生き物や物体の命を支配している核を成していると推測するものです。

 体内エネルギー105

 ですから、私達は体内にこの命の元である「エネルギー105」を持っている訳ですから、これと波動が合った時に生きている喜びや感動を感じるのだろうと思います。その反対に、音楽を聞いていて、聞き疲れがするとか、頭が痛くなるといった反応が現れるのは、「105の波動」の谷間に来ている「逆相状態」と見るのが妥当でしょう。

 測定器ばかりを頼りにした物作りをしていたら、「105の波動センサー」の働きが鈍くなるのです。それは、「感動というセンサー」が退化してしまっているわけですから、そういう人達が携わったら最後、良い物は出来ないと断言出来ます。

 価値ある物と陳腐な物の差は心にあり

 良い音を見つけるという事は、数多くの良くない音と出会わずしては手にし得ません。それだけに、気の遠くなるような実験の数と、莫大なコスト、そして時間(命)を必要とするのです。こうして、自分自身の肉体と精神を鍛え抜いた先に、初めてゆるぎない自信が芽生えてくるのです。

 それが、ある人間が作った測定器やコンピューターのソフトばかりを頼りに、楽して良い物を作ろう、という効率と生産性だけしか考えないような環境で出来た物は、どれも似たり寄ったりで、すぐに飽きてしまうし、捨てられてしまいます。また、別の言葉を借りて表現すると、どうすれば儲かるかという考え方が、作り手側に”いの一番”にあるようであれば、その先は破綻しかありません。

 「電気」、「振動」、「空間」、リンクしている3つの時間軸

<電気の時間軸>

 すなわち、ケーブルに関係する事です。出来るだけ同一思想で出来た同じメーカーの物を揃える様にするのが、チームワークのとれた良い音になる近道です。出発点からゴールまで、音楽を乗せた貴方の車が走りやすい道路でなければなりません。実際に、自分が車を運転している時に、どのような状態の時が運転しにくいか、また運転しやすいかを思い起こして頂ければ簡単でしょう。その目的は、A地点からB地点までいかに事故なく、速く、良い状態で届けるかです。これが伝送系の問題です。

<振動の時間軸>
  
 すなわち、床や、オーディオラック、スピーカー台、インシュレーターに関する事です。基本は「木」と「金属」の二つを上手く使うことです。「ガラス」と「石」は音楽の響きを演出することを考えれば、出来れば避けた方が賢明です。使うその材料は柔らか過ぎてもダメ、硬すぎてもダメ、ちょうど良いのが良いのです。必ず木と金属が交互になるようにしましょう。これは音楽振動の逃げ道を作ってやる必要があるからです。そうでなければ、振動が逆流して音を濁してしまうし、エネルギーも相殺され無くなってしまいます。

<空間の時間軸>

 すなわち、部屋の壁や天井の構造、カーテン等の吸音材、スピーカーを置く位置に関する事です。スピーカーを出来るだけ自由に音が出せるように、前後、左右の余裕を持たして置いてやりましょう。一旦、良いと思える任意の位置にスピーカーを置いたなら、「1kaiser」づつ前後にずらしてみて音を聞いてみます。その3ヶ所の音を聞いて1番豊かで響きがきれいに感じた所と、その中間の52,5ミリの位置でまた聞いてみます。何度かやる内に、ここが一番音抜けの良いポイントというのがハッキリと分かってきます。

 物の良し悪しの判断基準

 上の3つの時間軸についての判断基準は、如何なる素材や商品を持って来た時でも、音楽のエネルギーが上がって聞こえる「物であり」、「時であり」、「場所であり」がO.Kなのです。もしも、キツイ音が出たとしても、エネルギーが上がったならば勇気を持って「GO!」でしょう。その時は、他のどこかに別の問題点が埋もれてあったのを教えてくれたと解釈すべきです。

 逆にエネルギーが下がった時は、絶対に「STOP!」避けるべきです。その理由は、「荒さ」や「暴れ」を取ってくれたとしても、一緒に「音楽のエキス」までも奪い取ってしまうからです。これさえ守って頂ければ、間違った道を選択することはありません。岐路に出くわし、二者択一を迫られた時に必ず役立つでしょう。

 本末転倒だけにはならないように

 ここまで、どうある事が音が良くなるかというテーマでずっと話してきました。しかし、どうあらなければならない、とあまりにも理想を求めるが余り神経質になり過ぎると、本来楽しくあるはずの音楽鑑賞が苦痛になりかねません。最終目的は、好きな音楽を良い音で聴く事にあるわけですから、本末転倒だけにはならないようにするべきです。

 指揮官である貴方の腕の見せ所

 自分自身の感性で良し悪しを決められるようなアイデンティティーを持ちましょう。そして、最後には自分で良いと決めて買ったプレーヤー、アンプ、スピーカーといったコンポーネント達が、仲良くチームワークが取れるようにしてやる事が大切です。その為には、手元にある機器を信じてやる事から始めなければなりません。相性が悪いとか簡単に決めてしまうのではなく、どうすれば自分のステレオというチームのバランスがとれ、ハーモニーして行くことが出来るのかを考える事が指揮官である貴方の腕の見せ所なのです。

 価値ある人生の一助になれば

 オーディオのみに関わらず、全ての真理につながるスタンスで取り組んでおります、「音のカラクリ」の解明は私自身のライフワークです。この研究の一端でもいいですから、音楽ファンの皆様の価値ある人生の一助になればこの上ありません。もう一度、今までの5回分を読み返して頂き、今回のまとめを中心に自信として取り込んで頂ければ、もう音の事で迷う事はないでしょう。

 これだけ総合的であり、多面的に、また、物心両面の真理を元に、音に対して根本からメスを入れた論文は世界に例が無いと自負しております。今後のオーディオ界に大きな波紋を呼び起こす事になるでしょう。

A&Vvillage 1月号 第59号 P74〜P75に掲載されています。

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