トップ情報日本国民は日本という国をどんな国にしたいのか?>第二次安倍政権待望論U(全編) 国際政治学者 深田匠著

第二次安倍政権待望論U(全編) 国際政治学者 深田匠著

この論文は国際政治学者である深田匠氏が第二次安部政権を願って書かれたもので、冒頭にはそれを推す元航空幕僚長田母神俊雄氏の言葉が添えられています。


安倍晋三氏が自民党総裁になり、次の選挙が終われば第二次安倍内閣が誕生する公算が高くなってきた。安倍氏は5年前体調不良により内閣を投げ出す形で首相を辞任することになったが、第一次安倍内閣の1年間で、小泉総理が5年間も総理をやっても出来なかったことをいくつも成し遂げた。

安倍氏は元来身体が弱く、辞任当時は毎日20回もトイレに駆け込むほどお腹の具合が悪かったというから、辞任の仕方のまずい点は大目に見るべきだと思う。いまようやく彼の身体に適合する薬が見つかり、体調もいいということなので、今度こそは戦後レジームからの脱却を成し遂げてくれるのではないかと思っている。

いま我が国は10年以上ものデフレが続き、国力は徐々に衰え、学校を卒業しても2人に1人しかまともな就職が出来ないような状況であり、多くの国民が将来に希望を見出せないでいる。また中韓露などから領土問題を仕掛けられているが、これに対しても形どおりの抗議をする以外にはなんら解決策を実行できない有様である。

さらにこの20年では、かつては世界最強と言われた我が国の政治、経済、金融、雇用などのシステムを、「改革」の掛け声の下に政府が先頭に立ってぶち壊しを行って来た。それもこれも戦後のアメリカの占領下で我が国に押し付けられたアメリカの歴史観、すなわち東京裁判史観から我が国が抜け出せないでいることに起因している。

安倍氏の言う戦後レジームからの脱却こそが21世紀に我が国が世界に冠たる素晴らしい国として存続するために是非とも必要なのである。しかし我が国の多くの政治家は、保守派と言われる人でもそれに気付いていない。歴史認識などは過去の問題であり、何をいまさら騒ぐ必要があるのかという態度である。

しかし歴史認識こそが現在の我が国の政策の方向性を決めているのである。歴史認識の問題は我が国では現在進行形の問題なのである。そして安倍総裁は歴史認識が問題であることを十分に承知している数少ない政治家の1人である。

アメリカの占領下で徹底的な我が国の弱体化工作が実行された。アメリカによって我が国の歴史は暗黒の歴史に塗り替えられ、多くの日本国民が自虐史観に染められた。

また公職追放により20万人以上ものまともな人たちが職を追われ、その穴埋めに戦前追放されていた所謂サヨクと言われる人たちが当てられた。これらの人たちは敗戦により得をした人たちである。この敗戦利得者たちは戦後レジームからの脱却が行われることは自らの利益を失うことである。

そこで安倍総理の誕生は彼らにとっては大変な脅威なのである。敗戦利得者の代表である朝日新聞などでは、すでに安倍降ろしの動きが始まっている。しかし安倍氏に頑張ってもらわなければ将来の日本が困る。今のままでは我が国は早晩中国などに飲み込まれることになってしまうだろう。

先月自民党総裁選の直前に、国際政治学者の深田匠さんから「第二次安倍政権待望論」という論文が届き、先月の私のブログで紹介させていただいた。幸いにも安倍総裁が誕生し次の総理は安倍晋三氏になる公算が極めて強くなってきた。

そこで我々日本を大切にしたい日本国民が声を上げてしっかりと安倍内閣を支える必要がある。安倍降ろしの動きを私たちが止めなければならない。

この度深田匠さんが安倍政権を支えるために「第二次安倍政権待望論U」という論文をまとめられた。読ませていただいてまさに我が意を得たりという感じである。

読みやすく素晴らしい内容であるので皆さんにも紹介させていただきたいと思う。前回よりもさらに長くはなるが、多くの皆さんに読んでいただきたいと思っている。



「日出づる国の光芒」前編  国際政治学者 深田匠著

平成24年9月26日。この日、「小さな奇跡」が起こり日本に新しい希望が誕生しました。

当初はマスコミからはせいぜい3位どまりで苦戦するといわれていた安倍氏が、その予想を覆して見事な逆転勝利を果たされ自民党第25代総裁に就任されました。「このままでは日本は衰亡する」という国民の深刻な危機感によって、何か目に見えない大きな力が動き始め、すでに日本が変わり始めているのでしょう。

総裁選の期間中、相変わらず「戦後体制」にしがみつく左派マスコミは新聞・雑誌・TV等を総動員して石破氏を露骨に推す世論操作を試みました。

自ら捏造した「慰安婦強制連行」なる虚偽プロパガンダを死守したい朝日新聞にいたっては、「安倍元首相 思慮に欠ける歴史発言」(9月7日付)と題し、河野談話について「かりに首相に再登板した安倍氏がこれを引き継がないということになれば、日本外交が苦労して積み上げてきた国際社会の信頼を失いかねない。(小略)一国の政治指導者として不適格だ」などと、露骨な選挙妨害攻撃を繰り広げていました。

左派マスコミの意に反して安倍氏が決戦投票に残る可能性が高いことが判明すると、未練がましくも「石破氏が地方票で大差をつけた場合に『地方の声は無視できない』として、石破氏が支持を増やす可能性もある」(共同通信)などと、何が何でも安倍総裁誕生を阻止しようとなりふり構わぬ世論誘導を図りました。

しかしマスコミが「政権交代」の世論誘導を煽った民主党政権の醜態を目の当たりにしてきた国民は、もうこれまでのように簡単には踊らされなくなっているのでしょう。

石破氏の唱える「改憲、国防軍創設」は左派マスコミの思想とは正反対のものであるのに、なぜ左派マスコミは石破氏を推したのでしょうか。それは「戦後体制」の土台となっている自虐史観さえ守ることができれば、改憲も国防軍創設も簡単に潰すことができると考えているからでしょう。

もし安倍氏の手によってこの土台から変えられてしまえば、もはや「戦後体制」を守るすべがなくなるからです。従って安倍氏・石破氏の改憲や防衛面での主張が同じものであっても、それらの実現を妨げてきた「戦後体制」の本質が何かを熟知する安倍氏と、「戦後体制」の中で生きている石破氏とでは、思想的にあまりにも大きな違いがあるということです。

石破氏が民主党との連立を念頭に置いておられたということも、なんとしても「戦後体制」護持したい左派マスコミにとっては好都合だったのでしょう。なにしろ民主党は日教組や官公労・自治労など多くの左翼勢力に支えられているのですから、なんとかして民主党を与党に残したいという意図だったのでしょう。

安倍政権へのネガティブ・キャンペーンを繰り広げた左派マスコミは、自虐史観と共産主義への憧れから中国と通謀ないし共鳴し、中国の主張の代弁を長年行ってきました。

日中記者交換協定なるもののせいで、産経を除く日本のマスコミの多くは中国の従属下に置かれてきました。昨今のオスプレイ配備に反対する報道も、沖縄にオスプレイが配備されてしまえば無給油で一時間以内に尖閣へと海兵隊が到達できるからです。中国共産党に通謀ないし共鳴して中国の尖閣侵略を容易にする目的で、確信的にオスプレイ配備に反対している勢力がこの日本国内に確実に存在しているのです。そしてその勢力こそが安倍氏へのネガティブ・キャンペーンのいわば黒幕です。

安倍氏がまだ首相に就任されていない現在ですら、左派マスコミはふたたび安倍氏へのネガティブ・キャンペーンを再開し、3500円のカツカレーがどうのこうのと馬鹿みたいな難癖をつけています。カツカレーと国益と何の関係があるのでしょうか。

そして石破氏も同じものを食べていたのになぜ安倍氏だけを攻撃するのでしょうか。これこそがまさに左派マスコミがかつて行った安倍政権叩きと軸を同じくするものです。何ら政策とは関連のない事柄に対する理不尽な難癖・言いがかり・こじつけ・卑劣なイメージ操作の洪水です。

しかし左派マスコミがこれだけ懸命に石破氏を推し、安倍氏に対するネガティブ・キャンペーンを繰り広げたにもかかわらず、総裁選で安倍氏に期待する国民の声は広がりを増す一方でした。

ブログなどインターネットで、ツイッターで、街頭での呼びかけで、友人間や職場などのクチコミで、この国難に際して「安倍氏に日本を救ってほしい」という一途な思いで懸命に安倍氏への支持を訴え続けた国民の方々が多くおられました。安倍氏の勝利はすなわち、心ある多くの国民の声が左派マスコミに対して勝利したといっても過言ではないでしょう。

そして安倍氏の推薦人となられた議員の方々、第1回投票から安倍氏に投票された議員の方々は、石原氏支持を求める派閥の締め付けをふりきって、また「党員票が圧倒的多数」と予測されようとも惑わされて自虐史観リベラルの石破氏を支持することを是とせず、私利私欲も打算も超越して純粋に日本の将来を考えておられる方々だといえるでしょう。

「戦後体制」からの脱却には3つの関門があります。今回の安倍氏の総裁就任は1つめの関門を乗り越えたことになります。2つめの関門は安倍自民党が選挙に勝って第二次安倍政権が誕生することです。

そして3つめの関門は、安倍政権に対しておそらく前回同様のネガティブ・キャンペーンを繰り広げるであろう左派マスコミの攻撃から、国民の力でいかにして安倍政権を守り抜いていくかです。現時点ではまだ肝心の安倍政権は誕生していませんので、一日も早い安倍政権実現のために、より多くの一般国民が安倍氏の目指す理想への理解を深めてくれるよう、私たち国民有志も声を上げ続けていかなければならないでしょう。

第二次安倍政権が現実味を帯びてきた今、安倍氏と日本国民が共有するべき理想について、ここで改めて安倍氏が提示しておられる「日本再起」のための政策を採りあげ、私の専門である国際情勢の解説を交えながらの論評を述べさせていただきたいと思います。

現在多くの国民が中国の常軌を逸した反日攻勢に怒りを感じています。これまで日本から中国へ行ってきた経済援助は、国際機関を通じた迂回援助を合わせると7兆円を超え、形式的に民間を経由させた援助も合わせると10兆円以上にも達するといわれています。一国が他の一国に与えた経済援助額としては世界史上最多の金額です。

しかしながら中国はその援助の事実を自国民に伝えず、その金をインフラ整備などに充てることで浮いた予算をすべて軍拡費用にまわしてきました。日本からどれだけ多くの援助や技術協力をしてもらっても感謝の欠片すらなく、中国は核ミサイルの照準を日本の主要都市に向け、軍事力を背景にして日本の固有領土である尖閣を力づくで強奪しようとしています。

さらに中国政府要人が「沖縄は中国の属国だった。今後議論を始めなければならないのは沖縄の帰属問題だ」と公言し、沖縄を奪う意図を露にするまでに至っています。詳しくは別の機会に譲りますが、沖縄にはすでに中国の政治工作員が多数潜入しており「沖縄独立運動」を起こさせようと様々な工作を行っています。

反日暴動デモでは日本企業の工場が焼き討ちされ、日系デパートが破壊略奪され、在中日本人が暴行を受けましたが、このデモ隊を先導していたのは中国公安当局です。要するに日本に脅しをかけるための官製デモであったということです。日本企業の工場焼き討ちを許容せしめたことで明らかに中国は最後の一線を越えました。

国際政治学の観点で予測するならば今後日中冷戦はさらに加速することは疑いなく、中国に傾倒してきた日本企業は即刻その拠点をインドやASEANなどにシフトするべきでしょう。一党独裁国家では昨日までの法がいきなり今日変わるということが起こりえます。中国内の日本企業の全資産が没収される事態も絶対にないとはいえないのです。

中国がここまで増長するに至ったのは、ひとえに日本側の自虐史観による対中従属主義・謝罪外交を長年積み重ねた結果です。

日本の自虐史観に呼応する形で、中国でも江沢民時代に常軌を逸した反日教育が推進されてきました。現在の日中関係の状況はまさに日清戦争前夜を想起させます。明治維新で近代化を果たした日本は清が共に白人植民地主義と戦う友邦になってくれることを願って、「日支親善」を唱えて様々な援助を行いました。

しかし清はその援助を受け取りながら軍備を増強し、これみよがしに北洋艦隊を差し向けて日本を威嚇しました。こうして日本の善意は踏みにじられ続け、やがて日本と清は朝鮮半島の独立維持の是非をめぐる地政学的理由で開戦にいたったのです。

そして実は日中間でもう1つ繰り返されかけていることがあるのです。

シナ事変に先立ち中国共産党は国民党を巧妙に利用して「国共合作」という反日戦線をつくりました。国民党の中でも親日派であった汪兆銘は国民党を出て第三の道を選び、やがてシナはソ連と組んだ共産党、アメリカと組んだ国民党、日本と組んだ汪兆銘一党の3派が実質的な内戦を繰り広げる状況へ進んでいったのです。

日本が中国を侵略したのではなく、中国の内戦に巻き込まれたというのがシナ事変の真相です。

そして現在、中国は息のかかった台湾の外省人(蒋介石とともに大陸から台湾へ移った漢民族)を操って、台湾でも反日デモを起こさせ、尖閣については「中台合作」を呼びかけています。私の目には台湾の親日派である李登輝元総統が汪兆銘とオーバーラップします。

まさに歴史は繰り返すのです。日本は何度同じ過ちを繰り返せばいいのでしょうか。

私事にて恐縮ですが、私は9月末から数日間、台湾へ現地世論の調査に訪れました。

台北・台中・台南・宜蘭を回りましたが、台湾人の親日感情はこれまで通り何も変わらず、街は平穏であり、日本人に対しては非常に親切であり、そして台湾の一般国民から「親台派」だと思われている安倍氏の総裁就任を歓迎するムードがありました。

私は尖閣海域に侵入した台湾漁船団(台湾北東部の宜蘭の漁民)に近い人物とも接触しましたが、彼は「実は領有権などどうでもいいのです。宜蘭は漁業ぐらいしか産業がない街で、とにかく漁業権を認めてほしいのです。漁民の願いはそれだけです」と強調されていました。

また台北の企業人たちにも尋ねてみたところ、「あれは漁業の問題だから、漁業に無関係な仕事をしている人たちはほとんど関心がないですよ」とのことでした。

この台湾漁船団の尖閣侵入や台北での反日デモに対して資金提供しているのは、中国で手広く事業を展開し親中派(中台統一派)とされる台湾の某食品企業です。

その事実は台湾国民にもよく知られており、私が一般の台湾国民の方々に取材したところ、まるで口を揃えたかのように「あの食品会社の会長は若い頃は日本でお煎餅作りの修行をして、日本の製菓会社の応援で大企業に成長できた。    それなのに大陸でのビジネスを優先するために中国共産党に媚びている。あまりにも恩知らずだ」「あの会社の食品はもう買わないことにした」「日本は中国・韓国に嫌がらせされて気の毒だ。せめて台湾だけは日本の友人でいたい」「反日デモをやっている連中は中台統一派の外省人ばかりで、我々一般人は『またあいつらか』といった醒めた目で見ています」といった反応がほとんどでした。

日本人の中韓への旅行が激減した代わりに台湾への旅行が増えていることを台湾人は非常に喜んでおり、日本企業が中国から台湾へと拠点シフトしてほしいと願う声も多く聞くことができました。

台湾は東日本大震災にあたって世界一の240億ドル以上の義援金を送ってくれました。

台湾以外の全ての国からの義援金総額を上回る金額を、人口2300万人の台湾一国で送ってくれたのです。しかも台湾人の平均所得は日本の三分の一を多少越える程度です。巨額の義援金のほとんどは台湾国民からの民間寄付金です。  もしも台湾で同じような大震災が起きたときに、人口1億3000万人近い日本では人口に応じた比率(240億ドルの5倍)の義援金が果たして集まるのでしょうか。台湾の華視新聞等のアンケート調査では「台湾人にとって2011年で最も幸福だった出来事」の第1位は、「東日本大震災への義援金が世界一の金額になったこと」でした。

日本の左派マスコミはあたかも台湾でも反日気運が生じているような印象操作報道を行っていますが、これほどまでに日本に親愛の情を抱いてくれている友邦が簡単に反日に転じることなどありえないでしょう。今回の現況調査を通じて、台湾の親日感情はいささかも揺らいでいないことを私は確信しました。

しかし台湾においても外省人経営の親中派メディアが日台離反を煽る報道を盛んに行っていることは事実であり、中国は尖閣問題を中台統一(台湾併合)や日台離反のために利用していることを忘れてはならないでしょう。

台湾は軍事面における日本の安全保障の地政学的な要であり、また経済的にも日本への物資輸送は台湾海峡のシーレーンを通って輸送されており、台湾が独立を保ち親日国であることは日本の生命線なのです。  もしも台湾が中国と統一されてしまえば日本は軍事的に本土まで中国の侵略の脅威にさらされ、経済を支える輸送ルートも中国に握られてしまい、もはや中国の属国になるしか道がない状況に追い込まれます。ある意味において尖閣問題では同時に台湾の存在を戦略的に考えるマクロで視る必要があるのです。

今なお台湾国民から多大な尊敬を集めている李登輝氏は「尖閣は日本領だ」と認められた上で「台湾の漁業権だけ配慮してほしい」とおっしゃっています。

安倍氏は台湾政界の親日勢力とのパイプが太く、日本の政治家の中では最も李登輝氏と親しく、李登輝氏から多大な信頼を得ておられます。

そして安倍氏は訪台時に「日台を離間させようとの中国の動きに備えねばならない」と馬総統に率直に語りかけ、台湾メディアに「日本と台湾は深い友情で結ばれている。だから解決できない問題などない」と語られ、多くの台湾国民の心を魅了されました。



「日出づる国の光芒」中編 国際政治学者 深田匠著

中国が尖閣を口実に台湾を取り込んでしまえば、この貴重なる親日国が反日へと染まっていきかねません。

台湾に対して「台湾は尖閣の領有権を主張しない」という条件で、同海域で台湾に自由な漁業権を認める協定が実現すれば、台湾を中国ではなく日本の側に一段と引き寄せることができます。

安倍氏はこれまでも大きな視野での対中・対台戦略を構想してこられましたが、その中にはこの漁業権問題の解決も含まれています。安倍政権がその解決へ向けて取り組みを進められれば、きっと李登輝氏も台湾国民への説得役を引き受けられることでしょう。

尖閣に築かれた港を拠点に日本と台湾の漁船が仲良く一緒に漁ができる日がくれば、中国がいかなる日台離間工作を行おうとも日台は不動の友情を築くことができるでしょう。

野田政権は内閣改造において、私が拙著にて「狂気の媚中主義者」と評した田中真紀子氏を閣僚に起用しました。

さっそく中国の国営新華社通信は、田中氏が「日本の歴史教育には欠陥があり、歴史の事実を国民に伝えるべきだ」という発言を行ったと報じ、嬉々として田中氏を持ち上げる記事を掲載しています。

このような時期に自虐史観まみれの媚中主義者を閣僚に抜擢することは、中国に対して「もう日本は降参間近だ」という誤ったメッセージの発信につながります。

固有領土を侵略されかけ、狂ったような反日暴動デモで脅され、このような状況に至ってはいくら平和ボケの日本人であっても、もはや「相手の嫌がることはしない」という盲目的な「日中友好」は成り立たないことを理解しています。

友好どころか、日中両国はすでに冷戦に突入しているという現実を直視しなければなりません。

これからの日中関係はかつてのアメリカとソ連、また現在のインドとパキスタンのような関係に進んでいきます。

大陸国家の中国が覇権拡大を求めて海洋へ進出しようとすれば目の前に「邪魔」な日本列島が立ちふさがっているのです。

東アジアにおいて大陸国のランドパワーと海洋国のシーパワーが同等の国力を持ったことで、決して避けることのできない地政学的衝突が生じているのです。この衝突を回避することは不可能です。

しかし日中冷戦が米ソの冷戦と異なる点は、残念ながらすでに両国間に大きな経済的な結びつきが生じてしまっている点です。

安倍氏の対中「戦略的互恵関係」とは、経済面など日中両国ともにメリットになることであれば合意するが、日本の国益を損なうことは絶対に譲歩しないということです。

国益とは経済的な利益だけでありません。領土はいうまでもなく、主権・名誉・歴史観といった国家として絶対に譲歩してはならない大切なものがあります。

確かにそれを譲歩しないことで対中貿易減少など目先の経済的損失が出ることもあるでしょう。不当な関税をかけられたり、一部の資源の輸出を停止されることもあるでしょう。中国人観光客が激減することもあるでしょう。

しかし国益とは目先の銭勘定だけではありません。

主権国家として絶対に譲ってはならないものを譲歩していけば、そこに支配と被支配のシステムが成立し、相手側の要求はエスカレートの一途をたどり、最後にはすべてを奪われてしまうのです。

すなわち譲歩を重ね続けていけば最終的に日本はチベットのような状況に陥ります。

戦後歴代政権の多くは自虐史観による贖罪意識のせいで、中国や韓国に対し、譲ってはならないものを多く譲歩してきました。

河野談話や村山談話、教科書検定の近隣諸国条項などがその最たるものでしょう。河野談話を修正するという安倍氏の公約は、過去の政権の過ちによって譲ってしまった大切なものをもう一度取り戻すということなのです。

国のために命を捧げた戦死者に対する国家的感謝としての首相の靖国神社参拝も、国家として絶対に譲歩してはならない最たるものです。

中国は日本を精神的従属化に置こうとする戦略的意図により「靖国参拝をするな」と圧力をかけます。

中国に呼応する左派マスコミも、日本の自虐史観を利用して政権攻撃の材料に用います。無知蒙昧なコメンテーターや媚中左派の評論家などは「首相の靖国参拝は国益を損なう」などと主張します。

しかし日本の首相が中国の圧力を排除して参拝することは、中国に対して「日本は中国に従属しない」という国家的意思表示なのです。

それはとりもなおさず他国の内政干渉から日本の主権を守ることであり、固有領土を守り抜く決意とも表裏一体の関係にあります。

私たち日本国民はたとえ中国が経済的な圧力をちらつかせてもそれに動じてはいけません。経済関係をぶち壊しにして困るのは日本よりも、むしろバブル崩壊中だといわれる中国の側なのです。

日本には円と人民元の直接取引停止など多くの対抗カードがあり、日本側から積極的に経済制裁を仕掛けていけば先に根をあげるのは間違いなく中国です。

第二次安倍政権で実行されるであろう靖国神社参拝を中国がいくら非難しようとも、国民が揺るがずに安倍氏を支持すれば、安倍氏は毅然として国家の尊厳を守り抜いてくださるでしょう。

政府と民間が一体となってひるむことなく、中国との冷戦・経済戦争に必ず勝つという強い意思を貫き、目先の利益に惑わされたりせずに中国に対抗していかなければならないでしょう。

安倍氏がかつて進められ、再び実行しようとされている対中「戦略的互恵関係」を平易にいえば、「これまでの日本のような自虐史観外交・謝罪外交はしない。むやみに対立することはせず双方にメリットがあれば合意する。

しかし譲ってはならないものはたとえ経済的損失が派生しようとも決して譲らない。感情的にならずに冷静な判断で戦略的に国益を追求する。中国との国家間競争に日本は絶対に負けない」といったものだと感じています。

安倍氏が提唱されてきた「アジア・ゲートウェイ構想」は、日本が中国との冷戦・経済戦争に勝ち残るために極めて有効な戦略でしょう。

国際空港を24時間化することや税関・港湾手続きの統一簡略化、その他多彩なアイデアによるゲートウェイ構想は、アジアの代表は中国ではなく日本であるべきだという安倍氏の強い意思が反映されているものだと感じています。

日本が中国との経済戦争に打ち勝つには、まずは日本経済がデフレを脱却してふたたび成長軌道に乗らなければなりません。

経済政策については前稿をご参照いただきたいのですが、安倍氏の主張されている超大型量的緩和と成長戦略的財政出動、これが実行されればおそらく確実にデフレ脱却を達成できるでしょう。

何十年も続いた不況ですから一足飛びにはいきませんが、しだいに着実に景気が良くなり収入が増える実感を得られるようになっていき国内消費も回復していくでしょう。

安倍氏が提唱される成長戦略「イノベーション25」は、長期的視野に立った技術革新に国力を注ぐことであり、すでに世界27位(IMD「国際競争力年鑑」2012年)にまで低下してしまった日本の国際競争力をふたたび上位に押し上げていく原動力になるでしょう。

例えば安倍氏が演説で一例として言及されたスーパーコンピュータによる新薬開発ですが、新薬分野でも日本はデフレで企業の研究予算がとれず海外勢に遅れをとり、それどころか海外で承認された薬すら日本では一向に承認されないドラッグ・ラグまで派生している始末です。

しかし国が成長分野の技術革新を全面的に支援していけば、日本の技術力は必ずもう一度世界の市場を制するまでに成長していくでしょう。

本来最も国が支援しなければならない技術分野を「2位じゃダメなんですか」などと言っているようでは、日本の技術力も国力も衰える一方です。

デフレ対策に安倍氏が進めようとされている公共投資は無用のハコモノを建てるたぐいのものではありません。前論文でも述べたように、首都圏直下大地震や南海トラフ大地震は遠からず必ず起こります。これは避けようがありません。明日起こるかもしれないのです。

それなのに民主党政権は具体的な対策を何も進めようとせず、大津波に襲われることが予測される地域の住民は「津波が来たらあきらめるしかない」という嘆きの声をあげています。

しかし思い切った超大型量的緩和による公共投資を国土強靭化の対策にも回していけば、来る大震災の人的・経済的被害も軽減できることでしょう。財務省の操り人形のような首相のデフレ維持・増税・緊縮財政では、次の震災で失われる国民の命は増加するだけです。

安倍氏が言われる「日本人の命を守る」には、いうまでもなく震災の犠牲者数を少しでも減らしたいという意思も勿論含まれているのでしょう。

前稿でも述べましたが日本には復活の切り札があります。日本の天然資源は尖閣海域だけではありません。

日本のEEZ内における海底資源のメタンハイドレートは世界最大級の7兆立方メートル(天然ガス換算で1148兆立方メートル)、さらに南鳥島の海底には日本の国内消費の約230年分に相当するレアアースが埋蔵されている大鉱床が発見されています。

同海域では、従来中国でしか産出されていなかったジスプロシウム(ハイブリッド車のモーターに必須)が約400年分、光磁気ディスクに必要なテルビウムに至っては4600年分も存在することが確認されています。

千葉県沖の南関東ガス田にはクリーンエネルギーといわれる水溶性天然ガスが約800年分あり、同様の天然ガス田は佐渡沖や北海道など各地で続々と発見されています。

佐渡沖には大型油田の存在も確認されており、いうまでもなく尖閣海域は原油やメタンハイドレートやレアメタルの宝庫です。

これまで「資源のない国」といわれてきた日本は、海の中に膨大な天然資源を保有する世界最大級の資源大国だったのです。

現時点で判明しているだけでも、日本の領有する天然資源は総額で3京3200兆円にものぼると推定されています。

安倍氏の超大型緩和による財政出動をこれらの開発・採掘・実用化に投資してハイスピードで開発を進めていけば、日本経済は一気に甦り、いずれ世界を席巻するでしょう。

もしかするとアメリカのGDPを追い抜く可能性すらあります。政界を見渡すかぎり、この壮大な国家戦略を敢然と実行できる人物が安倍氏以外におられるでしょうか。

近未来日本の最大の問題でもある少子高齢化による現役世代減少についても、少子化の原因の一つはこの長引くデフレ不況にあります。

収入が減り続け生活が苦しく子供を育てる自信がないのです。収入が少ないために結婚したくてもできない人も多いのです。25〜29歳の男性の平均年収は277万円といわれています。これでは妻子を養うことができません。

しかしデフレ脱却して日本経済が再び成長軌道に乗り、景気がよくなれば出生率はふたたび上昇していくであろうと私は推測しています。

もし膨大なる天然資源の開発・輸出が大いに進展していけば日本には空前の好況が訪れ、しかもそれはバブルとは異なり実体経済を伴うものであり崩壊することはありえません。

日本人は「日本に生まれて本当によかった」と心から思える世界一幸せな国民になれるでしょう。

そして出生率は急速に回復し、豊かで笑い声の絶えない幸せな家庭が日本全国に満ち溢れるでしょう。

第二次安倍政権に最低5年間の任期が与えられさえすれば、この「夢」は必ず現実化へ進んでいくものと私は確信しています。

前回の安倍政権における大きな実績の1つに教育改革が挙げられます。

戦後長年に亘って日本の教育は、「戦後体制」の象徴ともいうべき日教組によって歪められてきました。

日教組は子供たちに自虐史観を植え付け、左翼的思想の注入をはかり、国を愛することや国を守ることは右翼的な危険なことなのだという観念を刷り込んできたのです。

その一方で組合員教師たちは授業そっちのけで赤い旗を振り回しての政治運動に明け暮れてきました。日教組こそまさに日本をダメにした元凶ともいうべき存在です。

歴代政権中で最も拉致問題に真剣に取り組んだのは安倍政権ですが、日教組は北朝鮮の官製教育団体「教育文化職業同盟」と密接な繋がりを保ち組合費からの献金まで行っており、「北朝鮮の教育こそ理想の教育だ」と発言したこともある槇枝元委員長は北朝鮮から叙勲されている人物です。

北朝鮮の教育を讃えるような狂った組織がいかなる思想を日本の子供に注入してきたかは推察するに易いでしょう。

教育を日教組の思い通りにさせないためにも、安倍政権は教育基本法や教育3法を改正して、子供たちが偏向思想に染まらない真っ当な愛国心を持つように教育改革を推進されました。

教員免許更新制度の導入によって、左翼活動家なのか教師なのかわからないような人物や怠けてばかりいる不良教師の存在は認めない方針を示されました。また、

悪名高い「ゆとり教育」について初めて見直しを実行したのも安倍政権でした。

日教組の要求に文科省が迎合した産物である「ゆとり教育」は日本人の基礎学力を著しく低下させ、日本の国際競争力を落とす一因になっていました。

一方で中国や韓国は少しでも多くの知識を与えようと詰め込み式教育を行っており、このままではいつか日本人の基礎学力・科学技術力は中韓に追い抜かれてしまいかねない危機に瀕していたのです。

このように歴代政権が日教組や左派マスコミからの批判をおそれて手をつけなかった教育崩壊問題に、初めて大きなメスを入れた唯一の政権が安倍政権だったのです。

しかし日教組に牛耳られている民主党政権のせいで、安倍氏の目指した教育再生の理想はまたしても歪められてしまいました。ましてや媚中主義の権化のような田中真紀子氏が文科相では、それこそどんな自虐史観教育の刷り込みが行われるかわかりません。

もう一度この道半ばの教育改革を安倍氏の手で完全な形にしていただかねばなりません。教育再生が果たせれば日本の次代を担う優秀な世代が育っていくことでしょう。

東日本震災の被害が拡大したのは菅政権が国家非常事態宣言を発令せず、現場の裁量権が制限されたままであったことも大きな原因です。

もしも大震災が安倍政権の時代に起きていたのであれば、間違いなく安倍氏は国家非常事態宣言を発令されて国力総動員で被災地救済に全力を尽くされ、また原発事故の対応も即座に米国の全面支援を受け入れ、ここまで被害が拡大することはなかったことでしょう。

復興に取り組むべき今も民主党政権は自ら指揮能力を発揮することなく官僚と地方自治体に丸投げしているありさまです。

前論文でも述べた通り、安倍氏は官僚の政治支配に操られることなく政治主導の強いリーダーシップを発揮される方です。第二次安倍政権ができれば官邸主導で思い切った復興策を打ち出していかれるでしょう。

また前論文にて述べた公務員制度改革についても、安倍氏が辞任に追い込まれたことで事実上中断されていますが、これも第二次安倍政権によって行革が完成することでしょう。

防衛問題においては、安倍氏の提唱される通り、まず一刻も早く集団的自衛権行使の解釈変更が必要です。

「権利はあるが行使できない」という不可解な禅問答のような珍解釈は、まさに自虐史観に由来する防衛アレルギーの産物です。

これを友人同士の関係に例えれば、隣で友人が暴漢に襲われているのに助けてはならない、しかし自分が襲われたときは友人に助けてほしいということです。こんな卑怯な屁理屈が通用すると考えてきた「戦後体制」は狂っているとしか言いようがないでしょう。

狂気の赤いデモに国会を包囲されつつも岸首相は占領下の被保護国そのものの屈辱的条約であった日米安保を改定され、少なくとも形式的には対等の同盟にすることができました。

しかし集団的自衛権行使ができないかぎり、日本が一方的に米国に守ってもらう構図は変わらず、形式的には対等ではあっても実質的には日米は対等にはならないのです。

今、中国による直接侵略の危機にさらされているのは日本です。

それなのに日本はアメリカに対して「目の前でアメリカ軍が攻撃されても日本は助けません。アメリカへ撃ち込まれたミサイルが日本領空を通過しても日本は撃墜しません。でも中国軍が尖閣に上陸したときには日本を助けてください」という、想像を絶する厚かましい要求をしているのです。

日米同盟は勝手に永遠に続いていくものではありません。

日米安保条約は「締結国からの1年前の予告により一方的に破棄出来る」と定めています。アメリカの腹しだいでいつでも破棄できるのです。

もしも現在の解釈通り目の前で米軍が攻撃されても加勢できないという事態が現実のものとなれば、米国民の日本に対する怒りは頂点に達し100%間違いなく日米同盟は破棄されます。怒り狂う米国民の世論を前にしては、いくら対日重視の共和党であっても破棄に反対しにくいでしょう。

それゆえ米国共和党は様々なルートで日本に集団的自衛権行使の解釈変更を一刻も早く行うように助言を重ねています。

日米安保がなくなれば、核武装もしておらず空母すら保有していない日本にはもはや中国を抑える抑止力はなくなり、アジア太平洋は中国の軍事覇権下に呑み込まれます。それは日本の終焉を意味するのです。

長年に亘って左翼勢力は「日米安保によって日本が戦争に巻き込まれる」などと喧伝してきましたが、今や日本が尖閣防衛戦になんとかしてアメリカを巻き込もうと必死なのです。

おそらく毎度のごとく左派マスコミや左翼組織は「解釈変更は軍国主義への道」などと騒ぐでしょうが、国民の多くはもう既に妄想的平和主義の非現実性を理解しています。

安倍政権が行った防衛庁の省昇格は、左派マスコミの批判をおそれて歴代政権のいずれもが手をつけなかったことです。しかし実際に省昇格されてしまうと、今や「防衛省」は何の違和感もない日常光景となっています。国民の多くはもう軍事アレルギーから脱しているのでしょう。

平和ボケが続いてきた日本の中には戦争をしたい人など皆無であり、民主主義の日本が国民の意思を無視して外国に戦争を仕掛けることもありえません。

しかし侵略され攻撃されたときに、日本を守るのはまず日本自身なのです。何かあったらアメリカが助けてくれるだろうという甘えこそが「戦後体制」だったのです。

実は日本人が平和ボケの妄想に浸っていられたのはソ連崩壊までの間でした。それまではアメリカも対ソ包囲網の軸として経済大国日本を無条件で守ろうとしていました。

しかしソ連崩壊後の現在、民主党政権のせいで日米の信頼関係がズタズタになったこともあり、日本人が血を流そうとしないのにアメリカ人兵士の血を流す必要はないという考えがとりわけ米民主党勢力を中心に台頭しています。もはや時間的猶予はないのです。

日本は集団的自衛権行使の解釈変更と同時に、自国領土はまず自国で守るために、防衛予算を大幅に増額して防衛能力を高め、必要な関連法を至急に整備し、専守防衛を撤廃して「普通の国」にならなければなりません。

あってはならないことですが、もし仮に日米安保が破棄されたとしても、日本独自で中国と戦えるだけの強大な防衛力を保持しておく必要があるのです。

防衛力とは攻撃力と迎撃力がワンセットなのですが、日本は「近隣諸国に配慮」してわざと攻撃力を保持しないようにしてきました。

「攻撃的だから」という意味不明の理由で日本は空母も長距離爆撃機も弾道ミサイルも保持していません。

中国が空母を建造・就航させている以上、日本も同数の空母が必要です。長距離爆撃機も必要ですし、北朝鮮ですら弾道ミサイルを保持してその照準を日本に向けている以上は日本も弾道ミサイルを保有する必要があります。

無駄なコスト高をおさえて効率的に防衛力を高めるためには武器輸出制限も完全に撤廃しなければならないでしょう。

現在の日中の戦力では、中国は兵員数や兵器の量数では日本をはるかに上回っていますが、自衛隊(特に航空自衛隊)の技能や兵器の性能は日本が勝っており、尖閣で軍事衝突が起きても自衛隊が勝つだろうといわれています。

米国は安保条約の信義に拠って空母3隻を急派しており、万一の攻撃に対する臨戦待機状態を敷いています。米国はフィリピンにも原子力原潜を寄港させ、極東地域に軍事力の主軸を移動させつつあるのです。

いざというときに中国が送り込むと予想される戦闘機500機ですが、より高性能の米空母群のFA-18戦闘機が240機、空自が運用するF-15が約200機で計440機が迎撃可能であり、制空権が奪われる心配はありません。

制空権さえ奪われなければ制海権も保持でき、制海権があれば陸上兵力の人員移動も容易に行えます。

日本のような海洋国家の防衛ではその鍵を握るのは航空面での軍事力なのです。

中国の空母にしても旧ソ連の古いジャンク空母を改装した時代遅れのシロモノに過ぎず、艦載機の開発が遅れており離着陸訓練はまだ行われていません。今ならまだ日本は勝てるのです。

しかし、日本が現状の防衛予算のままであれば、あと10年経てば中国の軍事力は日本を圧倒するでしょう。

中国のGDPが予想以上に早く日本を追い抜いたことに鑑みると、あと5〜6年で戦闘力の逆転が生じる可能性もあるでしょう。

つまり今から5〜6年間の日本の防衛努力がそれから先の長い未来を左右するのです。この5〜6年こそが最も大切な時期なのです。まさにその時期に安倍氏が次期首相候補となられたことは天が日本に味方してくれたとしか言い様がありません。

安倍氏の防衛思想は「強い防衛力を保持することが抑止力となって戦争を防ぐ」というものですが、これは国際政治学では鉄則の常識です。

平和主義だの何だのといって自ら攻撃力を低下させて防衛力を弱めれば、対立国が戦争を仕掛けてくる誘発要因になってしまうのです。

世界一の軍事力を誇るアメリカに戦争を仕掛ける国はありません。

しかし僅か8500人の弱小軍しか持たなかったチベットはどうなったでしょうか。

左派マスコミや左翼勢力が唱える妄想的な「平和主義」こそが戦争を招くのです。

「日本は平和憲法があります、憲法9条があります」と叫んだところで、それが中国や北朝鮮に対して一体何の抑止力になるのでしょうか。この馬鹿げた妄想憲法は今や日本への攻撃を誘発する「戦争誘発憲法」と化しているのです。

戦争防止に最も有効なのは核兵器の保有ですが、仮に核兵器がなくても「日本は侵略や攻撃を受ければいつでも躊躇なく戦う国であり、それだけの強大な軍事力を保有している」という事実があれば、安易に日本に手を出そうと考える国はありません。

こんなことは国際政治学を学ぶ者は学生ですら理解しているのに、その常識が通用しなかった狂った異常な時代が「戦後体制」なのです。

例えばこれまで日本は「周辺諸国に配慮」して潜水艦保有数は16隻を上限とし、まだまだ十分に使用できる新しい潜水艦を退役させスクラップ処分にしてきました。

中国のご機嫌を損ねないために自ら防衛力を削いできたのです。そして中国に「配慮」して防衛力を低下させてきたせいで中国に侮られて尖閣を奪われかけているのです。

「周辺諸国に配慮」してきた理由は、その根底に「かつての日本は悪の軍国主義国であり中国などを侵略して近隣諸国に迷惑をかけた」という自虐史観(東京裁判史観)があり、そして「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という異常妄想が記された占領憲法です。

この自虐史観と妄想的平和主義こそが「戦後体制」なるものの実態だったのです。

パラオのような小さな国ですら中国船の領海侵犯に対しては銃撃で応じているのです。この歪んだ「戦後体制」を終わらせなければ、日本を待ち受ける未来は衰退の果てに中国に併合される亡国でしょう。

「戦後体制」に幕を引くためには、憲法9条を改正して自衛隊を正式な国防軍として再定義しなければなりません。

それが実現できてこそ初めて日本とアメリカは対等な同盟国になれます。

GHQの米国人職員がわずか9日間ででっちあげた憲法こそがまさに「戦後体制」の根幹たるものです。この憲法は日本の手足を縛る目的でつくられており、米国の歴代共和党政権は対ソ・対中戦略のために日本が憲法改正することを要望してきました。

しかし日本の歴代政権は左派マスコミによる攻撃を恐れてこれを封印してきたのです。

そして歴代首相が恐れた通り、憲法改正を掲げた安倍政権はご存知のように左派マスコミの総攻撃をくらい、多くの国民が左派マスコミのネガティブ・キャンペーンに騙されて参院選で民主党に投票し、安倍政権を退陣に追い込んでしまったのです。

もう次はありません。第二次安倍政権は日本のラストチャンスなのです。万一、第二次安倍政権がもう一度左派マスコミに潰されてしまえば、全ては手遅れとなってしまいます。



「日出づる国の光芒」後編 国際政治学者 深田匠著

国民の手でそのような勢力から第二次安倍政権をいかにして守るかが日本の将来の全てを左右するでしょう。

例えば、TVや新聞・雑誌などが安倍政権へのネガティブ・キャンペーンをやっているのを見れば、すぐに国民がTV局(その番組のディレクター及びプロデューサーなど個人あて)や同番組のスポンサー企業、新聞社や雑誌社の記事執筆者や編集責任者あてに電話を入れて抗議することは有効な手段でしょう。

国民からのそのような抗議が大量に殺到すれば「安倍叩きをやると抗議が多すぎてその応対に追われて仕事にならない」といった事態になり、確信犯の朝日新聞・毎日新聞などはともかく、便乗で安倍政権叩きをしているマスコミのネガティブ・キャンペーンは減少していくだろうと思われます。

抗議はその件数が多いからこそ影響力を持つため、「誰かが抗議するだろう」ではなく、せひとも一人一人が積極的に行動を起こしていただきたいと願います。

なお「維新の会」についてですが、私は橋下氏の歴史観には疑問を感じており、根底の部分では橋下氏は石破氏に近い歴史認識を持っているように感じています。

竹島共同管理案は世論の非難をあびましたが、橋下氏は「加害者側(日本)が謝罪は十分!と言えますかね」などと述べておられ、「日本=加害者、中国=被害者」という白黒二元論の東京裁判史観から脱却していない様子が伺えます。

日本は敗戦国ゆえに「加害者」のレッテルを貼られたにすぎず、戦争とは国益と国益の衝突にすぎず、日本は日本の国益のために戦っただけなのです。

日本が「悪」であったのではなく、日本にとっての「悪」と戦っただけなのです。

国益を守れる体制をつくるには、国益を守るために戦った大東亜戦争を正しく評価する歴史観が不可欠です。

「戦後体制」とは敗戦国ゆえの自虐史観の上に立脚した体制であり、自虐史観を引きずっていては「戦後体制」からの脱却は不可能でしょう。

確かに安倍氏の目指しておられる憲法改正を実現するには「数の力」が重要になってきます。

安倍氏は「維新の会」からも信頼されているので、憲法改正や教育改革といった理念の一致する政策ごとについてのパーシャル連合であれば大いに進めるべきでしょう。

「数の力」があれば、憲法改正を含む「戦後体制」打破がスムーズに進むからです。

しかし一番肝心な根本的な思想では安倍氏と橋下氏では相容れないものを感じます。

また「維新の会」に集まっている候補者についても、果たしてどれだけの人数が自虐史観を脱しているのか大いに疑問を感じざるを得ません。

議員バッジを付けたいだけの無知な烏合の衆では何の意味もありません。政策アドバイザーに就任された米田健三元代議士は自虐史観の悪影響を熟知されておられる方ゆえ、ぜひとも「維新の会」候補者への歴史認識教育に励んでいただきたいと思います。

左派勢力の激しい抵抗が予想される「戦後体制」打破には、味方は多ければ多いほどそれに越したことはありません。

安倍氏は政界再編にも言及しておられますが、その理想は「単なる選挙互助のような政党ではなく、保守が結集した政党、そして左翼・リベラルが集まった政党に二分されていくのが本来あるべき政党の姿」というものでしょう。

実はこれは私もずっと著書などで訴えてきたことで、米国の共和党・民主党のように政治思想の違いによって政界再編されることが日本の政治を根本から立て直していくことにつながると私は考えています。

例えば安倍氏の盟友である真正保守の平沼赳夫氏が別の党におられる一方で、中国に媚びることが生きがいのような左派が自民党内にいたりもします。

安倍新総裁誕生をうけてのインタビューで古賀誠氏は「安倍さんとは思想が違う。右に寄りすぎなので真ん中に戻していく」といった趣旨の発言をされていましたが、要するにこれは「戦後体制からの脱却など許さない」という意味でしょう。

ここまで思想の異なる人物が同じ党内にいては足を引っ張るだけではないでしょうか。

古賀氏と親しい野中広務氏が中国の国営TVに出て、尖閣国有化に関し「こんな不幸な事件が起きたのは、まったく日本の人間として恥ずかしい。中国の皆さんに大変申し訳ない」と謝罪し、「長い間戦争で多くの犠牲を残し、今なお傷跡が癒えていないその中国に対して、歴史を知らない若い人たちはそういうことを抜きにしてひとつの対等の国としてやっているんです。それは間違っています」などと自虐史観まるだしの対中従属発言を行っています。

驚いたことに何と野中氏は日本が中国と対等ではないと主張しているわけで、ここまで見事な売国を行う人物がいまだに自民党内に一定の政治的影響力を持っていることは事実なのです。

一方で民主党内にも数は少ないものの例えば松原仁氏や北神圭朗氏など、真っ当な真正保守思想を持った方がおられるのも事実です。

例としてお名前を挙げたこのお2人は自虐史観から完全に脱却しておられ、終戦記念日にも靖国神社を参拝されておられる方です。そして実は北神圭朗氏は同じ選挙区に本拠を置いてきた野中広務氏と熾烈な政治闘争を繰り広げてこられた方なのです。

北神氏は「野中王国」と呼ばれた野中氏の利権を崩し、媚中派のドンともいうべき野中氏の政治的影響力を抑えるために必死に戦ってこられた方です。つまりもしも選挙で北神氏が落選してしまえば、日本を中国の従属下に置きたい野中氏の政治的影響力は増してしまい、野中氏は安倍氏の理想実現を阻害しようとするでしょう。

つまり「民主党議員だから全員ダメ」ではなく、この北神氏のように「戦後体制」脱却のために絶対に必要な人材もおられるのです。北神氏は平成22年の安倍氏を中心とする訪台議員団の団長も努めておられ、安倍氏がホストをつとめておられたCS対談番組では自民党以外の党から一番最初にゲストに招かれています。

このように北神氏や平沼氏をはじめ本来であれば安倍氏の理想を支えることができるはずの人材が他党にいて、安倍氏を邪魔する媚中派が自民党内にいるといった状況を鑑みると、やはり政党というものはその政治思想・理念によって構成されるべきでしょう。次回の衆院選の結果が新たなる政界再編、政治思想による再編につながることを期待したいと思います。

TPPについては、同時に二重の視点で戦略的に捉える必要があります。経済問題としてのTPPと、対中包囲網構築の国際戦略としてのTPPです。本来はTPPそのものについては対中包囲網を構築するには非常に有効な戦略なのです。自由主義国による経済圏をつくることは中国に対する強力な国際的対抗勢力を築くことができます。

また同じ経済圏に属する国が攻撃されると全体に悪影響が及ぶため、同経済圏の国が一致団結するという安全保障的な側面もあります。しかし経済面での日本の国益を投げ捨ててまで無条件参加するわけにはいかない国内事情があることも事実でしょう。

安倍氏は「交渉力を強めた上で国益を守れるかどうか考えないといけない。聖域なき関税撤廃は反対」と言明されていますが、これは対中「戦略的互恵関係」と同じく譲れないものは譲れないという信念でしょう。

実はTPPのような案件については日米首脳同士で水面下での秘密交渉が進められるのが常であり、日米が互いに「これは譲歩できる」「これは譲歩できない」と内々で「聖域」について話し合ってすりあわせを行うものなのです。

ブッシュ政権が米国産牛肉の輸入規制などについて小泉政権に圧力をかけなかったのは、良好な日米関係のもと水面下での話し合いでブッシュがそれを了解していたからです。

しかし民主党政権が日米関係を壊してしまい、中国のご機嫌ばかり気にしてきた民主党政権は米国とのパイプが弱く、さらに間の悪いことに米政権も嫌日傾向の強い民主党政権であったことも重なり、米国は水面下で話し合う対日配慮すらせずに高いハードルのままで日本に「イエスか、ノーか」を突きつけているのです。民主党政権が続くかぎり米国は日本をまともに相手にしないことは確かです。

一方、安倍氏は米国とのパイプが太く、日米同盟のあり方に関する安倍氏の考え方はとりわけ共和党勢力から極めて高い信頼を得ています。私は共和党筋との情報ルートがありますが、共和党関係者は口をそろえて「中曽根以降の日本首相で我々が最も信頼していたのは小泉と安倍だ。

安倍政権が長く続けば日米同盟はより強固に生まれ変わっていただろう」と断言します。中曽根・小泉両政権が長期政権であったことを考えると、僅か1年でここまで米国の信頼を勝ち得た安倍氏の外交能力には驚嘆するより他はありません。もちろん米国が民主党政権であっても米国の安倍氏に対する信頼は野田政権とは比べ物になりません。

第二次安倍政権が誕生すれば、TPPは日米首脳間での水面下での話し合いが再開されるでしょう。その話し合いによって「聖域」が守れるのであれば対中包囲網の一環として参加するべきであり、「聖域」が守れないのであれば不参加もやむをえないのではないでしょうか。

TPPは国論が分かれていますが、国民にはTPPの対中包囲網の側面があまり知られていません。安倍氏はその側面もよく理解されているだけに、たとえ参加であれ不参加であれ安倍氏であれば最も国益に沿う結論を出していただけるものと私は確信しています。

誰よりも深く日本を愛する安倍氏が熟考されて下した決断であれば、その決断がどちらの結果であっても私たち国民は安倍氏の判断を信じるべきでしょう。

TPPも含めて経済分野などにおいて米国の一方的要求を押し付けられることになる根因は、憲法や集団的自衛権といった「戦後体制」のせいで日本と米国が対等な同盟国になれないことに由来します。

自主防衛力の増強を蔑ろにして安全保障をアメリカに依存してきたからこそ、他の分野では引き下がるしかなかったのです。軍事も経済も外交もばらばらに存在するものではなく、あらゆる国策は密接にリンクしているのです。

とりわけ米国の政権が民主党の場合は日本を「アメリカにとって都合のよいATM」のように見る傾向が強く、クリントン政権による対日経済戦争を引き合いに出すまでもなく、日本に対する経済的圧力は激しくなりがちです。

対手が共和党か民主党かによって日本も対米戦略をアレンジする必要がありますが、それらを分析して総合的対策を立てていく司令塔的なセクションが日本にはありません。

対米のみならず対中政策も対韓政策も対露政策も、日本の省庁縦割り・省益優先によって、政府の大きな統一方針のもとで動くことなくバラバラに動いている実情になっています。とりわけ対中・対台政策などは媚中派の官僚が勝手に独断で動かしているような側面があります。

安倍氏はアメリカをモデルにして国家安全保障会議(日本版NSC)の創設を構想しておられます。中国の軍事的覇権の脅威に直面している日本にとって、最も重要な国家戦略は外交・安全保障に関わる国策の策定です。

しかし民主党政権が設けた国家戦略室の戦略項目からは外交・安全保障に関する項がすっぽりと抜け落ちています。こんなものは国家戦略とはいえません。国家安全保障会議は外交・安全保障の重要な方向性を決定する司令塔的なセクションですが、まさに民主党政権の国家戦略で抜け落ちてしまっている項目そのものです。

この構想が実現すれば、日本の外交・防衛は省益や官僚の独断に左右されることなく、統一された政府方針のもとで著しい質的向上を遂げるでしょう。中国に媚びたい一心の駐中大使が勝手な発言をして中国に誤ったメッセージを送るようなことも起こらなくなるでしょう。まさに「強い外交、強い防衛」を実現する司令塔となるセクションが誕生するのです。

また安倍氏はスパイ防止法制定と日本版CIA創設の必要性も主張されておられます。防止法がないため、これまでの日本は中国・北朝鮮・ロシアなどのスパイがあふれかえり「スパイ天国」といわれてきました。日本に機密情報を教えると筒抜けに中国などに漏れるという理由でアメリカも本当に重要な情報を教えてくれません。

国家公務員が中国のスパイに国を売っても微罪にしか問われないため、まさにやりたい放題、国を売りたい放題の大安売りでした。中国や北朝鮮の核ミサイルにも日本の技術が流れており、スパイ防止法がないことによって失われた国益は計り知れません。

そして日本にCIAのような機関がないため、日本はひたすら重要情報を盗まれる一方で、他国の機密情報をほとんど得られません。米英露仏中はいうまでもなく先進国で諜報機関を持たない国なんて日本ぐらいのものです。

なぜスパイ防止法や諜報機関がこれまで存在しなかったのかといえば、これもまた自虐史観を根底とする「国家は悪」といった概念が根底にあるからです。安部氏であればスパイ防止法や諜報機関を設けてようやく日本を普通の先進国の姿にすることができるでしょう。安倍政権が誕生すれば「日本の007」が世界を股にかけて活躍する日が訪れることでしょう。

前稿でも述べましたが、安倍氏が政権当時に進めておられた自由主義国による対中包囲網構築は、日本が繁栄を維持して生き残るためには絶対不可欠な国際戦略です。

日米に加えてインド・ASEAN・豪州・台湾などと安全保障面と経済面での実質的同盟を築き、将来的にはアジア版NATOのようなものを創立することが重要です。

NATOはソ連の脅威に対抗して欧州の自由主義国が安全保障のために結束した同盟ですが、アジアでは中国の脅威に対抗するために日本こそがアジア版NATOの音頭をとらねばならないのです。それを実行できるビジョンと能力を持つ首相は安倍氏しかおられないと私は確信しています。

中国に膨大な経済援助を与えて謝罪と譲歩を重ねた結果、中国から侵略を受けつつある現状は、自虐史観外交・土下座外交・バラまき外交がもはや完全に破綻している現実を示しています。

安倍氏の価値観外交の本質は、価値観を同じくする自由民主義国との連携を強化すると同時に、「親日国との絆を一層深め、反日国に媚びることはしない」というものでしょう。それは安倍氏がODAを親日国優先に戦略的に実行するように指示されていたことからも裏づけられます。

日本ではいまだに形を変えただけの実質的な中国へのODAや経済協力が継続していますが、かつての米国がソ連に経済援助したでしょうか。そんな愚かな利敵行為は即座に全廃すべきであり、私は第二次安倍政権があらゆる対中援助を打ち切られることを強く期待します。日本と中国は冷戦を戦う実質的敵対国です。敵に塩を贈るということは国際政治ではありえないことなのです。

中国は軍事面のみならず経済面でもアジアをその支配下に置くべく「人民元経済圏」の構築を猛スピードで進めています。FTAや通貨変動同調などを駆使しながら「米ドル抜き」の経済圏をつくろうとしており、すでに台湾ドルは人民元との直接決済に合意し、ASEANの中核たるマレーシアやタイの通貨の対ドル相場も人民元に接近しています。

元来ASEANの多くの国は自国の主要産業を華僑に握られており、韓国のウォンもASEAN通貨と変動幅を合わせ中韓FTAにも前向きであり、このまま放置しておけばアジアは「人民元経済圏」になってしまいます。

アジアの経済は人民元を機軸に動くことになり中国の経済的影響力は巨大なものになります。日本も中国の顔色を伺う政策しか採れなくなり、いずれ尖閣も沖縄も奪われてしまうことでしょう。経済は安全保障とも密接にリンクしているのです。下手すれば日本の円はハードカレンシーの地位すら失いかねません。経済大国日本が中国の属国的な「貧しい国」へと落ちぶれることにつながるのです。

日本は何としても「人民元経済圏」を阻止し、米ドルと連帯した「円経済圏」を至急に構築しなければなりません。ところが民主党政権で行われてきたことは、世界で初めて米ドルを経由させずに円・人民元の直接取引きに応じ、さらに中国との通過スワップ、中国国債の購入、人民元建て債権市場構築への協力など、全力で「人民元経済圏」構築を支援する狂気の国家的自殺行為なのです。

人民元が世界通貨になることをあらゆる手段を駆使して全力で後押ししているのです。世界中のどの国もがドル経由で人民元に交換しているのに、よりによって同盟国の日本が世界で初めて「ドル抜き」で中国通貨をバックアップしたことは、米国にとっては重大な裏切り行為と映っています。

しかもTPPでは二の足を踏みながら日中韓FTA締結には前向きという民主党政権の姿勢には、米国の識者からは「日本は人民元経済圏に組み込まれて没落していき経済大国の地位を失う」と予測する声もあがっています。野田政権に一刻も早く退場していただかないと、この対中経済政策を採用する野田政権が続けば続くほど「人民元経済圏」は加速していくのです。

私は国際政治学の近未来予測の観点により、安倍政権が誕生すればまず真っ先に円・人民元直接交換を中止されることを要望したいと思います。国民の皆さんも「人民元経済圏」阻止こそが日本の繁栄を維持する国益であることを忘れないでいただきたいと願います。

なお韓国に関しては度を越えた侮日行為は確かに憤りを禁じえないものですが、価値観を同じくする自由民主主義国であり米国の同盟国でもあり、そして何よりも日本にとって地政学的に絶対的な鍵を握る位置にあることを忘れてはいけません。

感情論に動かされて戦略を誤ると日本の破滅につながるのです。現代地政学の始祖といわれるマッキンダーの言葉を借りれば「大陸国と海洋国の国力が均衡して衝突するとき、その中間にある半島国家を自陣営に組み入れた側が勝利をおさめる」と説いています。

日清戦争も日露戦争も朝鮮半島の独立主権をめぐっての大陸国(清、ロシア)と海洋国(日本)の戦争でした。現在朝鮮半島は大陸陣営(北)と海洋陣営(南)に2つに割れており、大陸側に位置する北朝鮮が中国陣営にある以上、日本と国境を接する韓国が日米など海洋国側なのか中国側なのかが日中冷戦の帰趨を左右するのです。

安倍氏はその地政学的現実をよく理解しておられます。日本の対外戦略を語るならまず地政学の正しい知識を理解しなければなりません。大陸国家・半島国家・海洋国家にはそれぞれ地政学的な宿命が存在しているのです。それを見極めて中長期的な戦略的判断を行うのが国際政治なのです。

残念ながら現在は韓国自体が幼稚な反日感情論に妄動するあまり、愚かにも自国の地政学的な視点を見失って対中包囲網構築を妨げており、このままでは下手すれば数十年先には韓国は北朝鮮ともども中国に併呑されて一自治区に落ちぶれているかもしれません。

米国は韓国のこの事大主義を熟知しているがゆえに、米韓FTAで韓国を事実上の経済植民地化して海洋国陣営に縛り付けようとしているのです。竹島や河野談話修正など譲れないものは一切譲れませんが、日本は韓国の幼稚な感情的外交とは異なるレベルの高度な視点で国際戦略を俯瞰するべきであり、長年の反日教育による反日史観の払拭は困難でしょうがせめて自由主義海洋国家として日米側につく必然性を理解させねばなりません。それを実行できるのは「価値観外交」を提唱されている安倍氏だけだと私は思っています。

単純な「親韓か嫌韓か」の感情的次元で外交を行うことは日本が韓国と同レベルに落ちることになるのです。対中冷戦の一方の当事者である日本がそんな低レベルの次元に陥って自由主義海洋国同士で争えば大喜びするのは中国であり、それでは日本が中国との冷戦に勝つことは叶いません。

日本に太刀打ちできない小さな国力しか持たず感情的な反日を叫んでいるだけの幼稚な韓国と、尖閣を起点に沖縄や台湾を呑み込み日本を完全にその覇権下の属国にするという明確な中期戦略を持つ中国とでは、日本が採るべき国際戦略は自ずとまったく異なってくるということです。日本にとって最も脅威となる本当の「敵」は何かを見極めることが重要でしょう。

なお本論を締めくくるにあたり、少し手前味噌のエピソードになって恐縮ですが、対中包囲網の大きな軸となるインドと安倍氏との関わりを述べさせていただきます。私の師である田中正明氏(歴史学者・松井石根大将元秘書。平成18年逝去)は、東京裁判で日本無罪判決を下したインド代表判事パール博士の愛弟子であり、昭和27年に講和条約発効により日本が主権回復したその日にパール判決を出版して「日本は侵略国ではない。占領軍の洗脳作戦に騙されるな」と国民に訴えられた方です。

田中氏は安倍氏の祖父である岸元首相とも親しく、岸氏の名代として台湾を訪れて蒋介石と面談されたこともあります。南京虐殺捏造を激しく批判する田中氏は中国や朝日新聞から敵視され、かつて人民日報の第1面に写真付きで「中国人民の敵」と題する中傷記事を掲載されたこともあります。戦前はアジア植民地各国の独立の志士たちを支援され、戦後は自虐史観を土台にした「戦後体制」と戦い続ける人生を一筋に歩まれた方でした。

その田中正明氏が生前に何度も口にされていたことが「占領軍が作ったこの戦後体制を一新できる人がいるとすればそれは安倍さんだろう」という言葉でした。平成5年に朝日新聞出身の細川首相の「日本は侵略国」発言を受けて、自虐史観に批判的な自民党の一部議員が日本近現代史の勉強会「歴史検討委員会」を立ち上げられ、安倍氏・中川昭一氏・平沼赳夫氏らもその中心メンバーになっておられました。

田中氏も講師として出向かれたのですが、その際に出会った愛国心にあふれた1人の新人議員の真摯な姿勢と強い意志に田中氏は強い感銘をうけられ、「この人は将来必ず国を変えることができる人だ」と直感的に感じられたそうです。そしてその新人議員こそ若き日の安倍氏だったのです。

小泉政権の時代に逝去された田中氏は残念ながら安倍政権誕生をその目で見届けることは叶いませんでしたが、安倍氏は首相としてインドを訪れた際に、パール判事のご子息に会いに行かれ、チャンドラ・ボース記念館も訪問されました。

産経以外のマスコミはほぼ黙殺したのですが、これは非常に大きな意義のあることで、パール判決を日本国民に想起させることで自虐史観からの脱却を促すとともに、インド人に対しては大東亜戦争における共闘の記憶を呼び覚ますことができる非常に優れた外交戦略です。

かつて日本軍とインド国民軍はインド独立のためにともに血を流して一緒に戦いました。独立の志士チャンドラ・ボースの記念館を訪れた安倍氏の姿は、その日印共闘の歴史を多くのインド国民にあらためて思い出させたことでしょう。

安倍氏がインド国会で行われた「二つの海の交わり」という演説は、インド国会議員に深い感動を呼び起こし全議員総立ちのスタンディングオベーションがいつまでも鳴り響きました。親日国との絆を一層深める外交は大成功だったのです。

胡錦濤に握手してもらうためにぞろぞろと議員を引き連れて訪中した小沢氏の国辱的行動に比べて、安倍氏の訪印は日本外交の大きな勝利だといえるでしょう。中国に対抗する包囲網構築には、親日的であり巨大な人口を持ち高度経済成長中である核保有国インドとの連携は極めて重要な鍵を握ります。

いわばインド抜きには対中包囲網は完成しないのです。安倍氏は歴代のどの首相よりもインド国民の心を惹きつけました。日印関係のエポックメイキングとなる貴重な一歩だったのです。

しかし大きな外交成果を築いてインドから帰国された安倍氏を待ち受けていたものは、あいもかわらず左派マスコミによるネガティブ・キャンペーンの罵声、そして左派マスコミに踊らされた国民からの罵倒だったのです。  これほど理不尽なバッシングを受けた安倍氏がそれでもなお日本と日本国民を見放さず、こうして日本を再起させるためにふたたび立ち上がってくださったことに、国民の一人として私は深い感謝の思いを禁じえません。安倍氏がふたたび首相としてインドを訪れ日印同盟への具体的な歩みを進めることを、きっと天国のパール判事や田中正明氏も願っておられることでしょう。

揺るぎない意志でソ連との冷戦に勝利をおさめ米国を唯一の超大国へと導いたレーガンは、大統領就任直後に支持者たちにこう語りかけました。「我々は心の痛む敗北を何度味わい、暗い孤独な夜を何度過ごしたことか。だが今や我々保守の時代が到来した。自由のため、保守のために全力で戦えば、後世の人は必ず、我々を勇気と英知のある人間として、歴史に栄誉をもって位置づけるだろう」と。やがてレーガンのその言葉は現実のものとなりました。今の日本に必要なのは、レーガンのように強い意志と信念で国民を導いてくれる指導者です。私は安倍氏こそが「日本のレーガン」になれる唯一の人物であると確信しています。

私たち日本国民は5年前に選択を誤りました。左派マスコミに踊らされて稀代の改革者たる宰相を辞任に追い込んでしまい、貴重な5年もの時間を失ってしまいました。その5年の間に中国は力を蓄えて日本を併呑する長期戦略を実行に移し始め、日米関係は破壊され、デフレ不況は深刻さを増し、震災と原発事故も重なって日本はすっかりボロボロになってしまいました。まさに国難の時代です。しかし今ならまだ間に合います。失ってしまった5年を悔いるよりも、安倍氏とともに未来を信じて決意を新たにしてもう一度やり直しましょう。

日本にはまだ世界3位の経済力があり、世界の最先端をゆく高度な技術力があり、世界最大級の膨大な海洋天然資源があり、勤勉で秩序正しく思いやりに満ちた国民性があります。かつて敗戦で焼け野原と化した日本は、世界中が驚く高度経済成長を経て世界2位の経済大国になりました。日本民族にはその底力があります。

理想に満ち溢れ心から日本を愛し国民を思いやってくれる宰相のもとで、政府と国民が心を一つにして力を合わせ、新しく生まれ変わった豊かな強い日本を築いていきましょう。自虐史観にとらわれ中国にひたすら媚びる卑屈な「戦後体制」は私たちの手でもう終わりにしましょう。中国との冷戦に打ち勝ち、そして誇り高く生まれ変わった美しく強い国を子孫に残してあげようではありませんか。

ともにこの国に生まれ、この国で生き、この国で死んでいく、日本を愛する同胞の皆さん。もう案ずることはありません。安倍晋三という一筋の光芒はやがて日出づる国を明るく照らす夜明けの太陽になるでしょう。不安にかられた暗い夜は終わり、もうすぐ新しい朝がやってきます。今こそ立ち上がるときです。「戦後体制」との戦いはこれから始まるのです。

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