トップ情報日本国民は日本という国をどんな国にしたいのか?>革命前夜・中国、死に体政権・米国、デフレ地獄・欧州…混沌とする世界、日本の進む道は「道義国家」だ

革命前夜・中国、死に体政権・米国、デフレ地獄・欧州
…混沌 とする世界、日本の進む道は「道義国家」だ

2014.2.8 MSN

日本を見る目が変わってきた

今、世界は混沌(こんとん)としております。米オバマ政権はいよいよ「死に体」化し、内政に行き詰まるのみならず、外交まで極端な弱腰に転じ、「世界の警察官」の役目を放棄する姿勢を見せ始めました。それを横目に、中国の覇権主義に歯止めがかからなくなってきています。

中央銀行を欠くユーロは、EU内の格差拡大と求心力を損ね、今やロシアが中東問題を皮切りに国際舞台に躍り出てきました。クーデター粛清を軍主導で進める北朝鮮の中国離れに反比例して、韓国の中国へのすり寄りが目立っています。中韓が共に経済鈍化、内政不安を抱える中、ASEANの興隆が具現化しつつあり、中東やロシア・欧州の日本再興を見る目が変わってきたようです。

こうした新しい動静の中、日本の対応策は選択幅が広がりそうな雲行きです。ノイジーな中韓とは距離を置き、露朝や極東以外の多国家と友好通商条約を多角的に結ぶと言った新展開も考えられる状況下にあるわけです。これまで進められてきた世界経済のグローバル化、すなわち経済の自由主義体制が崩れ、その流れは、各国の国家主導型経済へ向かい、当然の帰結として、諸国が自国中心主義へと転換を始めているととらえられましょう。その結果、覇権主義やゴリ押し経済主義が嫌われ、道義国家ジャパンの出番が来たのではないでしょうか。


ゴールデンサイクル

一方で、景気循環論者は、日本がゴールデンサイクルに突入し、2020年の五輪に向けてアベノミクス第四の矢が30兆円の波及効果を生み、建設、設備、在庫投資すべてが上昇局面で重なり、神武景気以来の勃興期が来るだろうと予測しております。それに加えて国際政治の論客は、経済再生が成り、安倍首相の価値観外交が広く認知されれば、日本が世界のリーダーの一角を占めるようになる可能性も大であると予言しました。

その後押しをするには、シェールガスのアメリカとメタンハイドレートの日本が世界景気を牽引し、日米基軸がスムーズに展開される必要があります。また、それには、世論をミスリードないしは誘導するといった偏向報道を排し「らしさ」を失わないフェアなジャーナリズムが必須条件となりましょう。

ゲーテの言に「最も国際的なものは、最も民族的なものである」とあり、リンカーンは「国民は記憶の糸でつながっている」と“らしさ”の大切さを強調しております。歴史と伝統の国・日本は、その独自性を矜恃しなければなりません。


求められる「決断」と「実行」

日本が活路を見いだすには、大局俯瞰(ふかん)と長期展望により方向を定め、立ち止まることなく、いちずに動き続けることが求められます。リスクがあるからやめておこうという姿勢が1990年代からの20年間の停滞を生んだ最大の要因だったことを肝に銘じ、決断と果敢な実行のみが未来を拓(ひら)くカギであることを、政治も経済も自覚すべきでしょう。

元来、日本民族は、目標を一つに頑張るのは得意中の得意で、無理難題をチーム団結力でクリアする当事者意識が強いのが取り柄です。無気力・無関心・無責任の三無主義を排し、傍観者にならないために、「半数もの人が反対だから止めておこう」ではなく「半数もの人が賛成しているのなら、やってやろうじゃないか」と予定調和を壊し、変革にチャレンジすることが肝要です。リーダーの務めは、世俗化した空気や通念から脱却し、決意と覚醒で有言実行を先導することであり、それで初めて日本を取り戻すことができるわけです。


習政権は長続きしない

ただ、世界あっての日本ですので、まずは周辺から見回してみましょう。

中国の三中総会はこれまで経済改革がメーンテーマだったのですが、習近平政権として打ち出した政治方針が「国家安全委員会の創設」だったことは、世界へ向けて大きなインパクトを与えました。しかも欧米の「NSC」や今般日本でも設立した「国家安全保障会議」などが、対外「国防体制」を目的としているのに対し、習政権のそれは全く別のものです。

「国内のテロ分子・民族分裂者に対するもの」だと中国政府報道官が明言しているように、対内権力の掌握と、天安門や山西省の事件の直後だけに、国内治安維持・情報一元化(メディア規制を伴う)を狙った施策であることが明らかです。それほど共産党員の危機意識が高まっていることの証左だといえそうです。

それに比べて、おざなりに羅列された各種経済施策が、2020年限りとするなど、何もやらないと同然の悠長なものだったことから、胡錦濤経済改革との決別さえ匂わせております。もともと中国経済の“見かけ上の成長率”をまともに報じているのは日本の大手マスコミぐらいで、バブル崩壊のカウントダウンが始まったという見方が大方でしょう。

昨秋表面化したシャドウバンキング問題は、国有銀行、商業銀行の個人住宅ローン貸し出し停止措置で、不良債権増大が地方から都市部へ及んでいることが明るみに出ました。

これに輪をかけて深刻なのは、若年失業者の大量発生で、都市大卒3百万人と地方からの出稼ぎ農民工1億人にも及んでいるそうです。こうした流民の急増はここ数年漸増しており、まるで革命前夜を想起させ、少なくともさまざまな「乱」の頻発が動乱に及ぶ可能性はかなり高まっているようです。

とすれば、毛沢東路線回帰を図る習政権は長続きせず、一旦は退歩したかに見える胡錦涛系の李克強首相一派(汪洋、李源潮ら経済改革派)が近未来までに取って代わる可能性が強くなりつつあります。


中露韓朝の接近・離反

朝鮮半島の動きにも新激流が見られます。南の中国急接近と、北の反中国の動きに注目すべきでしょう。張成沢処刑と同時に、北の対中貿易関係者数百人以上と親中派政府高官20数人が失脚するなど全く連絡が取れなくなっており、現下中国とのパイプが完全に遮断されたようです。

張氏と金正男が進めてきた対中経済改革開放政策の頓挫を、金正恩と軍部が中国関係を修復するのか、それともロシアと急接近するのかで大きく様変わりしそうです。シンガポールに移住していた正男が急遽(きゅうきょ)北京へ呼び戻され護衛が付いたとの情報もあり、中露韓朝4カ国間の当面の接近・離反騒動からは目を離せません。

一方で韓国産業界が、内需不足とウォン高で競争力を欠き輸出低迷から大失速をきたし、頼りの中国経済依存もままならぬ模様だそうです。鉄のポスコ、自動車の現代や造船など大手の低迷はもちろん、中堅新興財閥が相次ぎ破綻し、唯一頼みのサムソンさえ売り上げ減、利益急減(18%ダウン)と苦境にあるのが現実です。

もともと研究開発力を欠き資金投入不足を模倣とスケールメリットでカバーしてきた製造ノウハウは、すでに中国やアセアン諸国にとって代わられ、先端技術流入源だった日本が警戒を強めたため、諸産業総崩れに至ったようです。異常な反日攻勢と告げ口外交こそ、「窮鼠猫を噛む」現象ではなかろうかと思えます。


頼みのドイツは原発のくびきで窮状に

欧州へ目を転じると、ギリシャの債務危機に始まったユーロ危機はスペイン、イタリアに及び、独り勝ちドイツを除き、今や全欧州が“処方箋なきデフレ長期化”の兆候を見せ始めております。企業倒産と失業の急増が南欧の重債務国以外にも蔓延しフランスや北欧諸国まで拡散しています。

しかも、頼みのドイツが脱原発のくびきから逃れられず、再生エネルギーの代替もならず、フランスの原発依存もままならないため、足元に火がついてしまっています。ドイツの窮状の現実を日本の反原発マスコミは報道せず、小泉純一郎元首相や都知事候補者の細川護煕元首相ほか多くの政治家や識者が相も変わらず対策なき原発全廃を言挙げし、盲目的に付和雷同する者の絶えないわが国の危機感欠乏症ぶりには、悲しみさえ覚えます。


日本の原発技術は世界トップレベル

原発といえば、IAEA資料によると目下世界で432基が稼働中で、主要国の現状と2030年までの計画数を列記してみますと、米(現100基−計画127基)仏(58−61)露(33−89)中(17−224)韓(23−34)印(20−84)英(16−29)加(19−24)日(50−事故前計画65)で、中国の世界一戦略とロシア・インドの急増が目につきます。

その中国には危うい側面があり、産経新聞の報道によると、原発一機当たりのトラブル件数が日本の5倍以上にもなっているそうです。脱原発のドイツの家庭電気代が10年で2倍にもなり、既述のようにエネルギー不足問題まで併存させており、一方日本でも原発停止後、東電管内の電気代が家庭当たり年間2万2千円も値上がりし、化石燃料輸入増が4兆円弱となっている現実にも目を向ける必要がありそうです。

しかも、世界の原発の炉心の8割は日本製鋼所が関わり、50年にわたり技術を積み重ねてきた日本の実力は世界トップレベルの評価を受けており、現在でも9カ国から技術協力を求められているという事実があります。これを生かし安全強化を早急に進め、再稼働が急がれます。

それと、放射能恐怖をあおる論調の行き過ぎと誤解を正すことも急務でしょう。原爆の被“爆”量に比べ福島原発事故の被“曝”量は、字が違うごとく、万分の1からせいぜい千分の1単位であり(現実に死者0、明白な罹病者0)、人畜無害の安全宣言をした放射能医学者たちの声がなぜ無視され続けるのか、マスコミ報道のあり方も考え直すべきではないでしょうか。


輝く未来秘めた国

最後に日本の行方を概観しておきます。経済面では、景気回復の道が開けてきたようですし、外交通商面でも、ほんの数カ国が反日姿勢をとる中、三十数カ国が格別親日的で、残り百数十カ国も日本の文化・産業を評価してくれているのです。そのことを自覚すれば、日本は“輝く未来を秘めている素晴らしい国家”であり、今後の20−30年を見据えると、21世紀後半の世界をリードする特異な“道義国家”となれる可能性は極めて大であろうかと考えます。

カギは戦後自虐史観を捨て、政官民の自信回復と活性化に尽きましょう。

(上田和男)




上田和男(こうだ・かずお)
昭和14(1939)年、兵庫県淡路島生まれ。37年、慶応大経済学部卒業後、住友金属工業(鋼管部門)に入社。米シラキュース経営大学院(MBA)に留学後、45年に大手電子部品メーカー、TDKに転職。米国支社総支配人としてカセット世界一達成に貢献し、57年、同社の米ウォールストリート上場を支援した。その後、ジョンソン常務などを経て、平成8年(1996)カナダへ亘り、住宅製造販売会社の社長を勤め、25年7月に引退、帰国。現在、コンサルティング会社、EKKの特別顧問。

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