MSN 2014.5.25
ソ連崩壊予告の再現なるか
ソ連崩壊を6年前に予告した著者が、中国の崩壊は数年先ではなく「事態はきわめて緊迫している」として、中国の末路を展望してみせた。
かつてソ連が東ドイツを見捨てたように、中国も北朝鮮を“手放す”可能性が高いと指摘。韓国も南北統一に備えて70日間は独力で北朝鮮を支える計画を立てているもののその後は日本などに頼らざるをえない。そして北の指導者はスイスへ亡命する−。ずいぶんと大胆な予測が続く。
シャドーバンキング(影の銀行)の破綻懸念や、深刻化する環境問題、さらには共産党の腐敗も底が知れない。経済危機に直面して大量の失業者が発生すれば、路上生活者の急増や暴動の続発が予想され、中国は大混乱に陥ることになる。すでに中国崩壊を見越して、米国は中国からの自国民引き揚げを進め、在中米国人の数はすでに1万人以下だという。在中邦人14万人の日本も、有事となる前に手を打っておきたいところだ。
中国が崩壊したらどうなるのか。著者は中国が単一の国家としては存続しえず、現在も独立色の強い7つの大軍区による7つの国に分かれるとみる。それらの国が互いに隣国を侵略しあう内戦が中国全土で繰り広げられる可能性も十分にあるのだという。
本書では湾岸戦争においてイラク軍のソ連製最新型戦車と米軍の戦車がほぼ同数で激突し、米側が完勝した事実も紹介されているが、著者の軍事に対する造詣の深さには驚かされる。軍事も含めた政治の理解抜きには、中国経済も理解できない。中国の危うさを多面的に浮き彫りにする手腕は、見事というしかない。
中国そして韓国、北朝鮮の行く末を見通した上で、日本はどう行動すべきかの指針をも著者は示している。現在の中国経済はバブル状態だと指摘されて久しいが、無限に続くバブルはありえず、破局は必ず訪れる。その時期の予測は難しいとはいえ、必ず起こる大混乱を前にまずは状況をきちんと把握しておきたい。備えあれば憂いなし。中国大動乱の余波を防ぐ上でも特定秘密保護法は必要だと著者は説く。けだし至言である。(東洋経済新報社・本体1500円+税)
評・溝上健良(文化部)