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オーディオの良い音の原点は蓄音器にあり


 手入れの行き届いた本格的な蓄音器でSPレコードの音を聴くことが出来たのは初めてでした。そして、如何に「電気がいたずらしている」かが判るには、私にはそう時間は掛かりませんでした。「電気の時間軸」と「振動の時間軸」の一致が完璧に100点を取れている音、すなわちオーディオのお手本がそこにはあるのです。

 プレスリーの「冷たくしないで」を最初に聴かせていただいたのですが、まるで「目の前で歌っているような迫力」に圧倒されます。こうした表現は私も無意識のうちによく使うのですが、今日のはまた違う「迫真の迫力」を感じます。自分の身体の中から「この音が欲しかったんだ!」と言う、シグナルが出てくるのが体感出来る瞬間です。

HMV-203 70数年前の高級蓄音器

 電気製品はドンドンと進化はしているようですが、ある面退化しているとも言えます。電気に過信しすぎる結果そうなるのでしょうが、100年近く前に作られた物にかなわないのですから、結局の所回路が複雑になればなるほど音が萎えてくるという点です。「考え方」のところで、ステレオとは「振動仕掛けで、電気を利用して鳴らす道具」ということを述べていますが、まさにそのことを確信できる瞬間です。

 音楽という感情の情報を、電気という伝送方法によって直列に指示命令を出して、末端の所(スピーカー)まで届けるには時間も掛かりまた正確にも伝わりにくいものです。その点SPはと言うと振動で記録をとられたディスクから針と直結したラッパを響かせて音を出すのですから、衝撃や振動によって物体から音が発せられる自然界にある音の仕組みとなんら変わらないからリアリズムを感じるのでしょう。

 「電気を使った事」=伝送の問題と「デジタルにした事」=変換の問題、この二点にどうやら「自然界にある音の出方」と大きくかけ離れていこうとするカラクリがあるようです。

 物を作る側としては「何が出来る」という事を訴えることの方が、「どう出来る」という事よりも分かりやすいし、結果としてよく売れるから、どうしてもその方向に物作りのベクトルが向いていくのでしょう。社会全体としては多数派の方へ流れていくのは仕方のない事です。しかしローゼンクランツでは「どう出来る」かにこだわり続けます。


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