トップ情報最近のニュース最近のニュース2002>同級生っていいなぁ!

同級生っていいなぁ!


 広島へ帰って来ると一人暮らしになり、食事が不規則になります。そして、たいがいが一日に一食といった日が少なくありません。履いているズボンがずり落ちて来るようになったので、久し振りに体重計に乗って見ますと59キロしかありません。何と4キロも痩せてしまいました。

 今までは食べたい時に食べていたのが中々そうは行きません。おいしいお店に限って1時半から5時くらいまでは仕込みの為に休むからです。その時間を逃がすと、欲しくなくなってしまうのですからこれまた困ったものです。

 博多の「万作」以来滅多な物は食べる気がせず、わずかな量の物でも残してしまう事が多くなりました。外食するようになってから、胃が取り込みたいと反応する時と、拒絶しようとするのが顕著な事が分かって来るようになりました。これはまた、新たな自分発見です。今までは家庭料理ですから、胃が信用しきって疑うことを知らなかったのが、「あれ?最近どうもおかしいぞ?」と防衛反応が働き始めたのだと思います。人間の身体って本当によく出来ているんですネェ。

 今日もお腹が空いて、食事したいなぁと思ったのは14時半頃です。思いあぐねど食べたい所は開いておりません・・・。そこで、奥の手である同級生の寿司屋に電話をして、

 「今日祭日で、こんな半端な時間でもやってるのか?」と尋ねると、

 「やってるよ!」と言う。

 「じゃぁ、もうちょっとして寄るから、・・・あっ、そうそう、それからこの間お連れした、九州のお客さんからおいしかったとお礼のメールが来てたから、パソコンを持って行ってそれを見せてやるよ」と言って電話を切りました。

志葉多(しばた)と読みます。
広島の皆実町商店街にあります。
電話 082-255-4437

 着いたのは4時頃でしょうか、

 「いらっしゃい!、今日は、雨で開店休業みたいなものよ、ひま、ひま」と来た。

 「寿司でも握ろうか?」、

 「う〜ん?、要らん、うどん貰おう!、・・・それと、巻きずし」。


 その前に、この店の事を書いたウェブをチラッと見せていたので、あのままじゃ、女将の絵がどんな物なのか分からないし、また、ページとしては車の話がメインで、ごっちゃになってもう一つ面白くないから、新たにページを起こす事にしました。

 「奥さんの絵の引き立て役に、お前の料理もついでにカメラで撮ってやるよ!」と憎まれ口を叩きながら出された料理の写真を撮って行きます。

 うどんだけは伸びたら食えませんので、写真撮影は一先ずおいて、食べる事に専念します。

 「やはり、うまい!」、「このうどんの出汁が、何とも言えん、うまいんです」。

きつねうどん

 「出汁はやはり鰹と昆布か?」と尋ねると、

 「うん、そう」と返事は短い。

 ラーメンの様に何でも有りの世界ではないのです。うどんは鰹と昆布と相場が決まっております。その中での勝負なんです。広島には大きくて有名な店が2件ありますが、そのどちらよりも美味いですネェ!。


 「か・い・ざ・き、(かなりドモッテ)お前ホームページも、持ってすごいなぁ!」。

 「そうだよ!頑張っているんだよ!」、

 「俺の真面目な部分も見せてやるから」と言って、

 『考え方』の中の「真実が根底に無いと物は売れない」というところを見せた。

 すると、「お、お前、これどこから写して来たん?!」と来やがった。

 ここ辺が、この男が「天然なのか?、実力なのか?」分からないところなのです。
 
 もう一つおまけに、こうぬかしやがった。

 「いつも野球で、ケツバットばっかり喰らっとったお前からは想像がつかんわ!」。

 ちなみに、この男はサッカーをやっておりました。


 「一緒に何か一つ握ってくれる?」。

 「ヒラメがうまいよ!」。

 「じゃ頼む!」。


 胃が活発に動き始めたのが分かります。

 「穴子も握ってよ!、それとタコの天ぷらも貰おうか」。


 そうしてる間に女将が帰ってきた。彼女は自分の描いた絵を自宅まで取りに帰っていたのです。

 「私のお気に入りはネェ、この『おこぜ』」。

- おこぜ -

 「これはいいねぇ!、これもいい!、ガラスがあると反射するから外して撮ろうよ!」。

 楽しいやりとりのひと時です。お膳の上で撮ったり、壁に掛けて撮ったりしていると、揚げて貰ったタコの天ぷらが冷えてしまった。それでも美味い!。

 「東京の試聴室のオープン何日頃だったかネェ?」と女将が聞いて来た。

 「は、は〜ん!、何とか今回だけは絵を描いてくれるつもりらしいな」というのが感じて取れました。

 「シメシメこれは楽しみだ」。

- とらはぜ −
- かさご -

 私は天ぷらが好きですから、さっきのタコだけでは返って物足りなく、イカも頼みました。

 「何か野菜は無いのか?」と尋ねると、

 「ジャガイモがあるよ」。

 「じゃあ、それをかき揚げ風に揚げてよ」と何の遠慮もなく頼めるところがすごくいい。

 「同級生っていいなぁ!・・・」。


 そうしていると、次々と馴染みのお客が入って来ます。「あっ、こうしてお客さんに愛されているんだなぁ!・・・」。そのお客さん達の顔の表情がみんないい事、この男の人柄が良いお客さんを引きつけるのだろう。飾りっけのない、裸のまんまのこの男は朴訥として魅力的。「こうした下町的な光景が最近はめっきりと少なくなったなぁ・・・」、としみじみとするものがありました。



 前回志葉多へお連れした九州のTさんから頂いたお礼のメールです。


 貝崎様

 Tです。
 
 この前は寿司を馳走になり、ありがとうございました。あのような食べた瞬間に幸せな気分になる寿司は滅多にありません。私の食べたなかでは小倉の「もり田」という、もう70歳くらいになるだろうという主人が握る寿司くらいしか他には思い浮かびません。

 たいがいは旨いすしだが、それは「上手い」寿司で終わっている。あのような寿司はネタのよさと技術だけではできるものではないです。ご主人が心から人を喜ばせたいというお人柄だからできるのでしょう。

 そして女将の絵!あの絵は対象を物として捉えてはできない絵です。自分と同じ生命あるものとして真正面から、かつ、魚と遊びながら描いています。江戸時代の京都の絵師、伊藤若冲の絵と同質の精神性を感じます。(精神主義者は彼の絵に精神性を感じないようですが・・・)

 是非、また秋か冬に行ってみたいお店です。ご主人と女将によろしくお伝えください。


back