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何百年も語り続けられるでしょう!大横綱貴乃花


 場所前の状態では、ぶざまな相撲しか取れないのは誰よりも貴乃花自身が一番よく知っていたはずです。如何に功績を残した大横綱とは言えども、これ以上は待てぬと言った強硬論の出場勧告や引退勧告まで聞こえて来ましたが、それらにはじっと耐え、あえて稽古総見の土俵には上がらず、相手との関係の中から自分の仕上がり状態を知るという方法は避けたのです。

 「屈辱」、「不安」、「恐怖」、「名誉」、「怒り」、「魂」、「家族」・・・、あらゆるものを乗り越えた先で選んだ道は、恐らく「心で相撲を取るんだ!」と言う迷いのない境地に至ったのではないかと私は推測します。

 ここまで心を磨こうと一生懸命になった横綱は他にいないのではないでしょうか。私たち凡人には逆立ちしても分からない極みを遂げたように思えてならないのです。黙して、土俵の上で結果を出す。身体に艶が戻って来、厚い胸板が日に日に隆起して来るのが見て取れます。

 日本の武道である相撲道と言うもの目指し続けるその姿には、日本人が忘れかけているものを余りあるほど教えてくれます。今場所の貴乃花の事を書こうとしますが、どれだけ書き直したでしょう。書けば書くほど自分の言葉が陳腐なものに見えてくるのです。あまりにも恐れ多くてこれ以上書くことが出来ません。


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