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100歳の物差し


 東京試聴室を開設するために借りたマンションは2LDKですが、全てフローリングの為、横になってくつろぐことの出来る部屋がありません。そこで近所の畳屋さんを尋ね7畳の部屋の半分に畳を敷いてもらう事にしました。

 翌日すぐに来て下さり、年期の入った物差しで計るのを見て、私は思わず「このサシは何歳くらいになるのですか?」と尋ねました。「さぁ〜私の爺さんの代からの物だから、かれこれ100歳くらいじゃないでしょうか」とおっしゃる。


 竹で出来てありますが、継ぎの所あたりは真鍮です。歴代の人達が使い込んで来た道具と言う物は、何とも言えないオーラを解き放っています。私の年の倍程生きて来ているのかと思うと尊敬したくなってきます。

 お年をお伺いすると67歳になられるそうです。普段使う筋肉と違うのでしょう、過日お伺いした際、私の住所を書き止めていた時の鉛筆を持つその手は震えていました。しかし、どうでしょう、畳の仕事になるとその手がシャキッとしてくるから不思議です。

 また、のれんを守って来た事の誇りを持っておられるのでしょう、そうした事の話題になると見る見る目が輝いて来るのが見て取れます。心の有りようと言うのはこうまで如実であるのかと感心しました。

 ただ、マンションの場合は、角に鉄筋の柱があっていびつな形をしております。そんな関係で、出来上がった物はピッタリではなかったそうです。そうですと言うのは、私は広島に帰っておりましたので、その場には立ち会っていなかったからです。

 一度持ち帰り、やり直してくれた時には大変見事な出来栄えで、そんな畳に横になってくつろぐと本当に心が休まるのでした。やはり、日本人には畳は無くてはならない物です。実を言うと、私にとってマンション暮らしは初めての経験で、何かしら落ち着かないものがありましたが、どうやらその原因は畳にあったようです。


 これで、東京でも良い仕事が出来る環境が整ったみたいです。今後のローゼンクランツにご期待くださいませ。


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