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”Kaiser Magic”


  あるお客さんのお宅へクリニックにお伺いした時の話です。「ナイアガラ」を早く聴かせて欲しいと言う要望にせかされるように、システムのケーブル類の結線の方向チェックは後回しにして、いきなり「ナイアガラ」だけで聴いて頂きました。

 「その結果は?・・・」。

 「幾分良くなったかなぁ?」と言った程度でした。

 「これでは売れません!」。

 「言葉には出しませんが、目がそのように私の事を気遣ってくれている様子でした」。

 私もある程度は覚悟をしていましたが、ここまで効果が少ないとは正直言ってイメージ出来ませんでした。勿論、当のお客さんもがっかりされているのは勿論です。その後、壁コンセントからナイアガラまでのACケーブルを、ローゼンクランツの4EX(Perfect)に交換して聴きましたところ、今度は見違えるような音になったのです。

 そんな事ですから、お客さんにとってはそのACケーブルの方に俄然目が行った訳です。相乗効果として良くなった訳ですが、やはり、換えた途端に音が良くなったのは、紛れも無くACケーブルの時です。ナイアガラに換えた時にはいくらも変化が無かった訳ですから、当然ACケーブルの方が圧倒的に性能が良いと思うのは当たり前の事でしょう。

 その後、色々とセッティングによって何一つ物を変える事無く、音を良くして行く訳ですから、「カイザーマジック」のように感じられたようです。

 最後に、注文を頂いたのは案の定AC-4EX(Perfect)を2本でした。

 何を買って頂いても、ローゼンクランツの製品ですから当然嬉しいのですが、ナイアガラの長所を充分に分かって頂けなかったのはやはり心残りです。そこで感じたことは、ACケーブルを先に交換した後、タップの聴き比べをもう1度すれば良かったのですが、それをすると、何だか言い訳をしているような気持ちになりそうだったものですから、その時は出来ませんでした。

 ここでの教訓は、ある程度基礎の所を最低限固めた上で、製品の良し悪しを聴き比べて頂くことが何より先決だと思いました。それ以来、私のクリニックの順番はすべての物の響きの方向をチェックする事から始めるようにしています。

 この方法は何処にも無いものですから、最初に音が出るまでのその作業中の空気は猜疑心が相当充満しているのがよく分かります。でも、それは音が出るまでのことで、一旦音が出てしまえば今度はいきなり、「神様」、「仏様」、「カイザー様」に代わるわけですから楽しくもある瞬間なのです。


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