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本当に役立つ情報はノイズの中にある



 1年ほど前のメールのチェックをしていたところ、あるお客様から頂いたメールの中に含蓄のある内容のあるコラムを教えてくれていました。再度読み返すと色々と考えさせられたり、示唆してくれていたりで3度ほど読み返しました。

 それはBPnetの中にある日下公人氏のコラムです。ノイズの中に役立つ情報があると説く今回の内容はオーディオにも相通じるものがあります。以下はそのまま抜粋した物です。

 私は人の書いた物をそのまま取り上げるということは滅多にしないのですが、今回のノイズに関する内容はアナログとデジタルの関係に当てはめて考えると妙に合致するのです。


 本当に役立つ情報はノイズの中にある

 細部を見るのは非常に重要なことなのだが、政策研究を志す人は、あまり細部を見ない。自分が総理大臣になったような気分を味わいたいのだろうか、自分は首相でもないのに、首相になった気分で「こうしろ、ああしろ」というのが政策提言だと思っている人が多い。

 そして最後に「思い切ってやれ」と書けば出来上がりで、いい気分である。だが、そういう取り組み方をしていては細部に神経が行き届かず、ほころびが出る。実行してもうまくいかない。

 その打開をするために、次は具体的実行案のアイデアを出さなければいけないのだが、それを言葉だけで考える人がいる。「計画的に進めろ」とか、「専門家を起用せよ」「海外の先進国の事例に学べ」とか、決まりきった美しい文句を付け足して出来上がったつもりになっている。

 それを読むと、きれいに出来ているけれど、きれいすぎて「本当かな?」とも思ってしまう。

 わたしは、本当に役に立つ情報はノイズの中にあると思っている。ノイズ、雑音。情報理論が盛んになって、情報をたくさん集めると大部分はノイズであるから、捨てなければいけないと言われるようになった。そこでは真に有用な情報をどのように拾い出すかが重要で、そのための評価が必要だという答えになる。

 なるほどその理屈はうなずけるが、では「これはノイズだ」と誰が決めるのだろうか。そこを考えなければいけない。頭のいい人はむしろノイズをほじくり返して、何かを発見してもうけている。それができない人は学者などになって、「ノイズをちゃんと正しく見分けることが肝要です」などと教科書に書いている。

 しかし、新しいものは必ずノイズの中から出てくる。古いことをやっていて「これは要らない」というのがノイズだが、何か新しいことをしたいと思ったら、そのノイズのゴミ箱の中をもう一度探さなければいけない。捨てたゴミ箱から何か出てくるものである。


 エッセンスを取り出すと、そこに進歩はない

 ノイズについての話としては、ある製薬会社の社長に聞いたエピソードを思い出す。その会社の主力製品の薬は、先代が戦前に発明したものだが、実は馬の小便を煮詰めたものだった。

 雌馬の小便を煮詰めた薬は、なぜかよく効くのだそうで、女性が飲むと、女性ホルモンか何かが作用するのか、月経不順などに効いた。他にもいろいろ試したそうだが、やはり雌馬の小便が一番効くらしい。

 ところが、戦後、厚生省が科学的になって、「薬として認可するものはすべて純粋な化学物質でないといけない」という法律をつくった。そこでその会社では、雌馬の小便の中で効いているものは何なのかを調べ、次はその成分を人工で合成するようになった。

だから、今は人工合成した薬を売っているという。「そのほうが清潔そうでいいですね」と言うと、「それがなあ」と社長は答えた。雌馬の小便のときは少ない分量でもよく効いた。ところが、純粋物質にしたら10倍の分量を打たないと効かなくなったという。

 つまり、ノイズが効いていたらしい。純粋物質だけでなく、その周りに得体の知れないものがあって、それらが総合的に効果をもたらすので少量でも効いたのだ。純粋物質にしたために、少量では効かない薬になってしまった。

 「会社としてはたくさん売れたほうがうれしいが、どんな副作用があるか分からない部分もあるから、飲んでいる女性の体が心配だ。しかし厚生省のいう通りにしなければいけないから」と、その社長は話してくれた。


 ノイズの見直しはいろいろな分野であり得る


 サイエンスをかたくなに信じる立場からは認めにくいのかもしれないが、ノイズも含めた総合効果というのがあるのだろう。そこまで言える医学者はまだいない。そこまで分かるほど科学はまだ進歩していないと思う。

 だから、ノイズをいっぱい集めて楽しんでいる人が一番頭がいいのではないか。エッセンスだけを取り出して、そこでやめてしまう人は進歩がないのではないか。

 ノイズも含めて考えていると、新しい打開策を思いつくことがある。ノイズを除けて考えていると、出来上がったものは万人共通の結論になりやすい。誰が考えてもそこにいくという結論になりやすいのだ。

 製薬会社の社長の例で言うと、ノイズを除いていくと大量投与という問題が出てきたりする。その副作用を社長は心配していたが、科学者と官僚は心配しないらしい。「いっそのこと馬の小便をそのまま粉末にして健康食品か何かで売りたいものだ」と社長は言った。

 これを教育問題に応用すると、実地研修、野外実習、インターン制度の見直しなどになる。企業経営で言えば、現場重視、たたき上げの効用、ベテランの味とかになる。

 つまりノイズはノイズでないということである。



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