何もしなくても、かなり良い音
クリニックの事が気になり、昨日Zさんの家へその様子を見に来られたSさんですが、お仕事は放送局のアナウンサーをなさってるそうです。JBL-S9900をチェロのモノラルアンプで駆動しています。実は本クリニックも『現代音響技術』の張国梁編集長が取材をしてくれる事になっています。
リビングの横長面にスピーカーを配置している関係上、試聴位置のソファーまでの距離は幾らもない状態ですが、それでも中々良いコンディションで音楽が鳴っていました。このS9900というモデルは66000の弟分に相当するモデル。シングルウーハーなので66000に比べると横幅がスリムです。
かつてのモニタースピーカー43シリーズとは違って、各ユニット間の繋がりが大変スムーズです。最早ジャズのJBLというだけでなく、クラシック音楽に対しても何の問題もなく見事にこなします。
内側に音が凝縮し、外への広がりが無い
このようなまとまった鳴り方をしていると、これといった不満はご本人には無いかもしれません。強いて言うならば、スピーカーの響きの方向性の問題で、真ん中に音が集まる傾向が強いせいで、外への広がり感が乏しいのが今日のポイントです。
その点を指摘し、左右のスピーカーを入れ替えて聴いて貰う事にしました。同行の作家J.T氏は、その処置後の音の違いに素早く気づいたようでしたが、他の皆さんはもうひとつピンと来ないようでした。
『全く同じスピーカーなのに、左右入れ替えろとは?』
『何と馬鹿げた無駄な事をするのだろう?!』
との、否定的な考えであるとするならば・・・。
「その音の違いを認識せよ!」
と言う方に無理があるかもしれません。
この診断と説明については、日本であっても、
理解をして貰うには結構ハードルが高いものなんです。
『その、同じ物だ!』 という、概念の方にとっては、
どちらを左右に使おうとも同じだという考えですから、
左右を入れ替えて使っても、何の差し支えもないという事になります。
今回は怪訝に思いつつも、チェンジする機会を与えられたのだろうと思います。
ウーハーユニットの取り付け角度が真の問題
その場では明かしませんでしたが、両エンクロージャーが内向きなのは勿論のですが、ウーハーユニットのエネルギーの向きがLchが5時の方向で、Rchに至っては9時の方向に向いていたので、各々のスピーカーのエネルギーは強烈に内に向かっていたのです。
その分ソロボーカル等のディスクは真ん中に凝縮する形になり、センタースピーカーがあるかの如く、中央への定位感は簡単に得られる長所があります。その反面音の広がりは全く無いので、Sさんの好きなクラシック音楽の魅力を充分に引き出す事は出来ません。
この場合のすべき本当のクリニックは、左のウーハーユニットを反時計方向に120度回して取り付け直さなければなりません。又、右のユニットは時計方向に80~90度回して取り付ける必要があります。その是正後に、左右のスピーカー本体を入れ替えてやるのが完璧な”カイザークリニック”なのです。
しかし、初対面でそんな話をしたところで、誰一人理解してくれる筈がありませんし、天下のJBLが責任を持って出荷した物に対して、知名度の低い私の言う事など、誰が信じるでしょう・・・!?
天動説を信じている中で地動説を唱えるようなものです。しかし、引力や磁場のあるこの地球上で物作りをする限り、方向性が生じる宿命から逃れる事は何人であっても出来ません。
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ジャンパーケーブルの試聴
ユニットの変更が出来ない分、ジャンパーケーブルで低・中・高音の位相を揃えようと考えました。音の繋がりを改善すると共に、音の広がり感を良くするのが狙いです。これはかなりの改善がありました。なのにもう一つ場が盛り上がりません。
スピーカー自体のfバランスが良くなった事よりも、中央部の凝縮していた音像が薄くなった事の方が気になって判別がつき難かったものと思います。だから、もう一度元の状態に戻して聴いてみたいとなりました。
戻してみると、ローゼンクランツ製の方が良いと分かったのか、又付け替えて再試聴です。取り巻きが多いと他人の目が気になり、正しい判断が出来難くなったものと思われます。
朝の9時から始めたクリニックでしたが、あっという間にお昼が来てしまったので、いそいそと片付け、すぐ近くの上海料理店で食卓を囲みました。・・・と、そこまでは良かったのですが、運ばれて来る料理の独特の匂いに、初日同様箸が全く動かない私達二人でした。