『”オーディオ相談”で検索して、カイザーサウンドの”無料電話相談”を知ったのですが、この電話で相談に乗って頂けるのでしょうか?』
「ハイ! 大丈夫ですよ、先ずシステムの概要を教えて下さい」
「次に、相談の内容を具体的にご説明下さい」
『主な使用機器は次の通りで、聴く音楽は殆どがクラシックです』。
DENON : DCD-SA1
DENON : PMA-SA11
DALI : HELICON 400Mk2
『月に2〜3回はコンサートに行きますが、
その生演奏とかけ離れた音はどこかがおかしいと思うのです・・・』。
『痩せた低音と歪みっぽく汚い高音は、聴いていてとにかく疲れます』。
「そうした症状の悩みを訴える方はかなりいらっしゃいます」。
「クラシックをメインに聴かれるのであれば、
HELICON 400Mk2のチョイスは素晴らしいと思います」。
「今回の問題解決には二つの要素があります」。
「一つは腕で出来る部分と、もう一つは物に頼らなければならない部分です」。
「最終的には卓越したセッティング技術で決めますのでご安心下さい」。
「しかし、こればっかりは電話ではどうしようもなく、
お宅へお伺いしない限り解決出来ません」
『来て頂けるんですか?』
「はい! 勿論です、どちらから電話頂いてますか?」
『都内の中野区です』
「それは近いですね」
こうしたやり取りの後、二日後に訪問する事となりました。
機器は売れども、良き音は売らないの?!
さてさて、CDプレーヤーの故障を機に一昨年の9月に上記システムに一新されたという事ですが、買ったお店の方から『音が落ち着くまでの1年は、様子を見て下さい』と言われて、じっと良い子にしていたのだそうです。
幾分音の硬さは取れたものの、ストレスとして感じている音の基本的部分は、待てど暮らせど何一つ好転しなかったみたいです。それは当たり前です。こなれ具合で良くなる事と、セッティングの良し悪しは全く別次元の話です。セッティングが良くない部分は何年経っても良くなる事はありません。
その結果、しびれを切らして”カイザークリニック相談”となったのです。
『売る事には熱心だけど、良いサウンド・コンディションを届けようとする姿勢はあまり感じなかった』そうです。
元々スパイクが付いているにもかかわらず、使用しないのは業界人としては信じ難い事です。あとで触れますが、そのスピーカーのベタ置きが全てを物語っています。
『だから今回は、オーディオクリニックやセッティングの専門家に頼もうと思った次第です』と打ち明けてくれました。
「心配は要りませんよ!」
「手立ては沢山ありますから、必ず満足行く音にして差し上げます」。
「大船に乗ったつもりでご安心下さい!」。
DCD-SA1の音を検証してみたかった
今回購入されたDCD-SA1は値崩れがひどく、新品で半値以下で売られていた事はあまりにも有名です。ヤフオクにも頻繁に出品されていました。H.Iさんも50万のものを半値弱で購入出来たそうです。
リーマン・ショックで売れなくなり、止むに止まれず投げ売りへと走ったのでしょうが、失った信用回復は容易ならざる事でしょう。それにしてもメーカーにとってのフラッグシップモデルがこのような扱いになるのは、他人事ながら忍びない気持ちで一杯です。
香港の外資傘下になってしまったが故の冷徹な判断なのでしょうか? 老舗とか信用を大切にする日本の文化観からは理解し難い面があります。あるいは音が芳しくなくて売れなかったのかどうかは分かりません。いずれにしても、憂うべき出来事にダメ押しとなる教訓を得ました。
その前に使っていたCDプレーヤーが、ロングランで信頼の1650シリーズだった流れがあり、DENONへの好印象がDCD-SA1の購入に繋がったのだと思います。しかし、DENONファンからすると複雑な心境である事に間違いありません。
さて、今日の結果はどんな風になるのでしょう・・・。
言われる通り酷い音だった
「では、聴いていて疲れる音というのがどんなものなのか?
実際にお聴かせ頂けますか?」。
『はい! 学生時代に親に買って貰ったテクニクスのステレオで聴いた時の、
マーラーの5番が忘れられないのですが、その時の感動とは程遠いのです』。
『壁から30センチほど離して下さい!』
と、助言を口にしながら設置してこうなのだから、如何ともし難いものです。
『力強い低音も伸びて来ないし、高い音も汚いでしょう?』。
「マーラーはちょっと聴くに耐えない音ですが、
このヴィヴァルディの協奏曲は元々の録音がとても良いですよ」。
「後ほどセッティングを試みる度にチェックしてみましょうね」。
一体誰から何を学んだのでしょう・・・? 私の見立てでは、
丁度エネルギーが殺がれる”気流の波の谷間”に位置する音なのです。
こういう場合は、カイザーゲージの真ん中の波の周期(157.5ミリ)の半分ほど移動させてやれば解決します。前後どちらでも構わないのですが、私が後ろに下げて調整すると、『後ろにやっていいんですか?』 との声が・・・。
『30センチは壁から離せ!』
との呪いの数字が頭にこびりついているのでしょう。
音は空気の波動現象によって変化します。従って、壁から30センチ以上離せば解決する訳ではありません。音波は疎密波となって壁との間で押し合いへし合いが常に起こります。それによって音の良い場所と悪い場所が交互に、ミクロ(高音)・マクロ(低音)でアンジュレーションのような変化で存在するのです。
スピーカーの足場が大問題
「今日は何があってもいいように万全の体制でお伺いしています」。「一番の問題はスピーカーの台座部分と床とが隙間のないベッタリとした状態に置いてあるので、次から次に押し寄せる音楽の振動のぶつかり合いで、”昏迷混濁”状態を引き起こしているのです」。
「床への振動の放出を素早くこなしてやれば解決します」。
「その場に一瞬たりとも音が立ち止まらない事が大切です」。
「ところで、スピーカーに付属していたスパイクがあると思うのですが、それを使って床から浮かし、更にスパイク用インシュレーターで受けたいと思います」。
『探せば出て来ると思うのですが・・・。
いざという時に限って、何処に収めたか思い出せないものですね』。
「当社にも音の良いエコブラス・スパイクというのがあるのですが、
手持ちの物を使うつもりで今日は用意して来ませんでした」。
高級インシュレーターの試聴
「止むを得ません、CDプレーヤーとアンプに使おうと思って用意していたインシュレーターを、スパイクで受ける代わりにスピーカーと床の間に入れて鳴らしてみましょう」。
「予算的には3倍ほどになるのですが、
スパイクのプランに比べると音は2ランクほど上がります」。
”歯と歯茎の構造”で有名なインシュレーターで、PB-Rosenkranzというブランド名を製品自体に冠した自信作で1個22,000円もします。音は申し分ないのですが、スパイクの4点受けと比べて地震による転倒に弱いのが難点です。
「インシュレーターの準備が出来ましたので、
先ほどと同じディスクを聴いてみて下さい」。
「如何ですか?」
『全然違います! 素晴らしいです!』
『昔聴いた音が蘇って来ました!』
『この感じで鳴って欲しかったのです・・・』
『聞こえなかった音がイッパイ聞こえます!!』
『これは驚きですね・・・!!』
「高音部の歪みっぽい音が取れたでしょう?」
『そうですね、すっかり気にならなくなりました』
『聴くのが辛かったのに、もっと聴いていたいと思うようになりました・・・』
『この差はデカイですね!』
合格と不合格の境界線が目の当たり
濁った音と耳に刺すような音は、スピーカーが故障しているのでは・・・? と思われたのは、普段生演奏の美しい響きを耳にしておられるので、脳が自然にその音色と比較してしまうのでしょうね」。
「美味しい料理と比べると不味い料理は食べたくないと思うように、
音色の魅力も料理の味も同じなんですよ」。
耳と舌は別だと思いがちですが、感じる脳は同じですから・・・。要するに、素晴らしい脳をお持ちだという事です。すぐれた感覚が今のストレス社会と相性が良くないのです。
『よく分かる例えですね、納得しました!』
『素晴らしい音を、かくも簡単に創って頂けるとは思いもしませんでした!』
「私の手の内は、今の時点では1/10も出していませんよ!」
『先ずは余裕ある及第点まで引き上げて下さったので、
今日のところはこれで充分満足です』。
『此処から先の更なる魅力ある音は、
”知らぬが花”という事で、次の楽しみに取っておきたいと思います』。
『自分は決してオーディオマニアではないので、
魅力ある音楽が聴けさえすればそれで満足なんです』と仰います。
『セッティングのプロに、「これで大丈夫です!」
と、太鼓判を押して頂いた事が何よりの安心に繋がります』。
最後のダメ押しに、二つのサービスを提供
音に対して逐一細かく言うよりは、H.Iさんのようにシンプルに音楽を楽しんで欲しいものです。ご自分の立場を理解した上で、あまりにも潔さを見せられたので、出来る限りの事はしたい! という気持ちになりました。
音にソリッドな面が少しあったので、アンプの空き端子部分にRCAキャップ(Rose cap と Oscar cap)二種類を巧みに取り付けます。差し込む深さの加減や角度等で音の響きの調整を取りました。大きな効き目を得、美しい音色になったので喜んで頂けました。
もう一つ気になったのは、左のスピーカーのすぐ内側にあるディスク棚です。これが左右のスピーカーの調和の邪魔をしているので、右のスピーカーの部屋の隅に移動しました。
これで両スピーカーの間にはオーディオラックだけになったので、スピーカー周りに空間が取れると同時に、スピーカーとラックが織りなす”床の振動周期の合わせ込み”が出来る事になりました。
このように理想のセッティング環境が得られると、カイザーセッティングは何倍も威力を発揮します。”気流の反射パターン”と”床の振動周期”を各々合わせられるので、リズミカルなサウンドとS/Nの優れた環境が確保出来るのです。
マーラーもヴィヴァルディも見事な変身ぶりです。
HELICON 400Mk2のリボンツイーターの威力が発揮され始めました。
予想を遥かに超える音を提供させて頂けたので、私としても満足の行く仕事が出来ました。帰り道の中野通りの桜並木がやけに美しく見えます。思わず車を止めてうっとりと桜に見とれていました。
未だ3月20日だというのに、ほぼ桜は満開に近い状態でした。こんなに早い開花は私の記憶の中にはありません。私の誕生日4月2日はいつも桜満開の真っ只中にあります。そんな関係で私は桜の開花情報には敏感です。
桜の花は本当に美しいですね。
ランドセルを初めて背負っての入学式は、人生の中でも一番か二番の感動ものですが、そのはちきれんばかりの喜びに拍車を掛けるのは桜の花です。新社会人となって大人の仲間入りする人もそうですし、あまねく人に幸せを運ぶ桜の花は、日本人の心と切っても切れない一体のものです。
グローバル化を考えると不都合があるとして、9月新学期の世界基準に合わせようとの動きがありますが、国花である桜に馳せる日本人の思いが希薄になって行くのは寂しいものがあります。何を取るかですが、都合や利ばかりが優先する世の中になると地球の西洋化が進むだけです。
桜の花にちょっと感傷的になりましたが、
今日もお客様に喜んで貰えて嬉しい一日でした。
話は変わって、強力な新製品の予告です。
カイザーは日に日に腕を上げています。
オーディオ業界がひっくり返る?!
世界初の製品を近々発表します!!
ご期待下さい!