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シンバルの音に惚れて買った、JBL-3100mk2

オーディオクリニックは私の人生学問

オーディオクリニックの楽しみはステレオの音もさることながら、業種や年齢を超えた幅広い人との出会いの素晴らしさにあります。私は人と会って話をする事が基本的に大好きです。ただ一人として同じ境遇の人は居ないので、学ぶところも多く勉強になると共に、私に不足している部分を補い豊かにしてくれます。

今日一日、今の一瞬を、思う存分生きる事が自然体で出来ています。とても有り難い人生を頂いています。ステレオの研究をしていると、人体の健康と人生航路に重なり合うのです。

考古学や生態系あるいは哲学や心理学といった全ての学問とも関係するから好奇心旺盛となります。ここらあたりが私の人生学問として生きる力となっているのかもしれません。

世界との競合に置かれた大企業では、専門化や特化が推し進められていますが、人間としては強い所と弱い所の二極構造になり、一人の人体の健康から考えると諸刃の剣と言わざるを得ないのではないでしょうか・・・。


お互いが車好きと分かり、話に花が咲いた

さて、M.Iさんの住所をナビに打ち込んでも正確な場所を教えてくれません。仕方なくM.Iさんに電話を掛けて迎えに出て貰いました。とても丁寧な話し方をされるので、どんな仕事の方だろうと興味がありました。40代半ばと伺いましたが、私より遥かに落ち着いています。

私の車を見るなり、『オメガですね!』。

『3リッターですか? 2.5リッターですか?』 

と問われて、すぐには返事に窮しましたが、

2.5リッターである事を思い出したので、

「2.5です!」と答えました。


ほんの僅か車を走らせただけなのに、

『滑らかな走りと安定感がありますね!』

との感想が返って来ました。


「有難う御座います」。

「愛情を掛けて、私自身の独自の方法で足回りを組んでいます」。

「それは、スピーカーの技術から得たものです」。


『今日一日がとても楽しみです!』


家に着くまでの数分間ですが、車に関する会話に花が咲きました。車のサイズから排気量を漠然と質問されたのではなく、オメガには2.5と3リッターがある事を知った上での質問だったのです。

「詳しいですね」と話を振ると、


アルファロメオに乗っていた時のエピソードを語ってくれました。

『インチアップして貰った直後、第三京浜での帰り道で、

ハンドルがブレて怖くて走れない経験をした事があります』。

『すぐにその筋の評判の高い人に観て貰い、

調整し直して貰うと見事な走りになりました!』

それ以来、腕前の違いに強い意識が行くようになったそうで、勿論、今回のオーディオクリニックに関してもその期待があっての依頼である事に間違いありません。M.Iさんの生まれ故郷が広島である事を打ち明けられたので一気に親近感を覚えました。


M.Iさんのオーディオシステム

JBL 3100mk2
KRELL KV300IL
ESOTERIC P-50S
Soul Note DC1.0
中村製作所 200Vトランス
クリプトン タップ
ナノテク SP-Cable、ベルデン
オヤイデ ACケーブル


エベレストシリーズの流れを汲む3100mk2は、43シリーズのモニター系とは全く違うコンセプトのスピーカーです。つまり箱鳴きを上手く利用した劇場用やコンサート用の音作りに近いものがあります。

そこらあたりの特徴を知った上で魅力を引き出してやるのがコツです。言葉で言うとこんな感じですが、では、どうすれば良いのか? という事になります。締める所と解き放つところのうねり加減がポイントとなります。

大方の場合は制動の効かない音か、痩せ気味でキツイ音になります。M.Iさんの場合はこの後者に該当します。特に2ウェイなので、ホーンの低い方の音とウーハーの高い方の音の繋がりが一番の肝となります。

それをアンプで行うのか? 

インシュレーターやケーブルで行うのか?

電源環境で行うのか?


音作りの方針がハッキリと見えた

お仕事が美容師さんと伺った時点で、私には音作りの方針がハッキリと見えました。女性の飽くなき美の追求と向き合う仕事は、普通の男性の感性と女性の感性の両面を持ち備える必要があるのでしょうから・・・。揺れ動くデリケートな面が一般男性と比べて発達していると推測します。

最初は3100mk2のような男っぽいスピーカーを選んだ所に問題があると受け止めていましたが、そうした面を取り込まないと、男としてのバランスを保てない本能がそうさせたのかもしれないと思えるようになりました。ご本人は無意識下で決めていたのではないでしょうか。

M.Iさんから頂いた相談内容は、ホーン部分と低音部が別々な鳴り方をしていて音に癖を感じる。スピーカーのサイズの割に小振りな鳴り方しかしない。しかし、この最近ソウルノートのバランスケーブルを買って、コンバーターとアンプの間に入れたら自分好みの音に近づいたという状態での訪問となりました。

私が聴く限りでは、可もなく不可もなくと言ったところなのですが、仕事ですから辛口で指摘して行きましょう。マイルスのペットとコルトレーンのサックスの解け合いが良くありません。ベースやドラムにしてもフロント陣をもっと引っ張って行く感じが欲しいです。

ナタリーコールの歌声も細身です。ふくよかさや温もりにも欠けます。もっともっと伸びやかさがあってしかるべきです。ゲッツとジルベルトのイパネマの娘も、弛い中にもリズミカルな心地良さがあるはずですが、今ひとつノリがありません。これらのディスクで大体の特徴は掴みました。


自分のリファレンス・ディスクではテストしない

私は数年前から自分のリファレンスなるディスクを持ち込まないようにしています。何故かというと、私好みのひとりよがりな音の押し付けになっていはいけないと思うようになったからです。

それは、ある評論家とのやり取りで強くそれを意識するようになりました。『私はこの録音現場に立ち会ったので、その時の元なる音を知っている』。『だからこのディスクに限っては、正しい音の判断出来る!』と言い切ったのです。

裏を返すと、その場に居ない人には分からないのだから、自分より正しい判断は出来ないと言わんばかりでした。いくら自分一人が分かったつもりでも、相手に喜んで貰わなければ何の意味も為さないという事をその件で悟ったのです。

それ以来、私はお客さんのディスクでしか調整しない事にしています。言い換えると、どんなディスクでも音の調整が出来るように耳や腕を鍛えたのです。それだけは自信があります。


むやみに機器のグレードアップは勧めない

『もっと力のあるアンプを繋いでやると、

スピーカーの実力が出て来ますよ!』。

『ビット数や、サンプリング周波数の高いモノになさったら如何でしょう!?』。

音のグレードアップを図る時に何処の誰に相談しようとも、

今の機器の倍の価格の製品を勧めたがるものです。

即ち、性能を上げる事しか頭にないのです。


しかし、カイザー流は違います。今あるメンバーの力を余す事無く発揮するところに目を向けます。機材達の能力を信じる事によってやる気にさせ、思う存分力を発揮させてやる環境作りに努めます。その為には何処に問題があって、前述のような音になっているのか? 正しい現状分析から始めます。


正しい診断を行い、正しい処置を施します

本件に関しては、ホーンとウーハーの調和の取れていないところが最大のポイントです。2番目は足場の御影石の響きの方向が左右チャンネルとも後ろに向っているのが原因です。石の目に方向性はあまり無いように思うでしょうが、意外にもその音にはかなりの方向性があります。

3番目は後ろの壁と大型TVの画面の反射のタイミングが良くない点です。4番目はバイワイヤリングに使用している低音用と高音用のケーブルが、あまりにも構造が違い過ぎて足並みが揃っていない事です。

力が殺がれる原因はこうした所に複合的に存在しています。どれも僅か数センチしか動かしていませんが、その効果たるや物凄く、全く別のシステムと言って良いほど鳴り方が変わりました。


バイワイヤリングも良し悪し

バイワイヤリング式に構造の違うケーブルを使って良くなるケースがあるとすれば、いびつな状態の中に反対のいびつさが合致した状態です。マイナスにマイナスを掛けた時にプラスになる現象と思って下さい。これは決して喜ばしい事ではありません。

下の写真はローゼンクランツのジャンパーケーブルを使って、シングルワイヤングにしたものです。ピタッとタイミングが揃い、信じられないような重低音から響きの綺麗な高い音まで出るようになりました。従って、スーパーツイーターも外しました。この処置はクリニックの一番最後にしたもので、説明の順番が後先になっています。

調整前 調整後


ネジの占め具合とエネルギーの方向性

その一番の問題点であるスピーカーの調和についてお話しましょう。鳴きの開放端であるホーンの四角い開口部が14本の木ネジで止めてあります。このトルクコントロール次第で魅力ある音に化けます。

3100mk2のホーンは中心を軸にした左右対称ではなく、片方側に音が伸びて行くように形状が最初から方向付けが成されています。それを内側へ向けるか、外に向けるかによって音の凝縮や広がりのチョイスが出来ます。

ホーンに限ってはこの二つを上手くこなせば良いのですが、厄介なのはウーハーのエネルギーの方向性です。これを解決出来るのはカイザーサウンドしかありません。クリニック時に是非とも利用して欲しいものです。


ホーンは15°位上方に向かって、お互いが中央部分で合流するのはとても良く出来ています。しかし、本モデルのウーハーが左右とも下向きとなっているので、音の繋がりとしては最悪のパターンです。これが聴感上に調和の無さとなって感じていた原因です。

時計の針で言うと6時の位置から1時の位置に、5/12ほど半時計方向に動かしました。従って右のウーハーは11時の位置になります。止めるネジの数こそ4ヶ所ですが、爪で抑える方式は無限の角度位置が選べるので、加速度組立を行うに於いては最高です。調整前後の写真は両方共左チャンネルのものです。ナマズひげの位置を参照下さい。

調整前 調整後


部屋の空気を音楽的に動かせているのか?

次は部屋に目を向けてみましょう! 部屋その物も屋根の勾配をそのままに使って高い天井を確保しています。リスニングポジションの後ろはカウンターキッチンで、その上も屋根勾配を利用したロフト部屋があります。

右スピーカーの前方は玄関までの通路が延びているのと、すぐ右には6畳ほどの洋間が開放されたまま続き部屋として繋がっているので、スピーカーが動かせるエアーボリュームは30畳前後の部屋の広さに匹敵すると思います。

変形した部屋を興味深く眺めていて、スピーカーとの間に共通性を発見したのです。3100mk2のホーン形状と天井の形がまるで瓜二つなんです。それに気がついた時、こんな偶然があるのか! と驚きました。

その面の比率は30倍位でしょうか、幸いにもスピーカーのホーンの音の伸びる方向と上手く合わせられそうなのです。もしそれが調和するようにセッティング出来れば、伸びやかで雄大で音楽心満載の音空間が出来るのでは?! との大いなる期待が膨らみます。使えるモノは何でも使うというのがカイザー流です。

この時点でM.Iさんの期待値の音をかなり上回ったようです。


Stream Reviver

前々回のクリニックのページあたりから、世界初の凄い製品を発表します! と予告していますが、昨日その試作が出来上がって来たので、M.I邸で実験してみました。残念ながらその姿を未だお見せする事は出来ませんが、信じられないほどの音楽エネルギーに化けたのです。

目の前で演奏している生々しさです!。

『現物を置いて行って欲しい!』

とM.Iさんに懇願されたのですが、

量産に入る際の見本として必要なので戻さなくてはならないのです。

折角凄い音になったのを元に戻すのは残酷なのですが、

完成次第、1号機をお持ちするとの約束で許して貰いました。

気流を自在にコントロールする新製品の名前を、Sound Injectionと決めていましたが、Injectionというのは中に取り込む意味しかないので、商品のコンセプト上相応しくないのでは? バイリンガルのお客さんから指摘されました。

そうして考えてくれたのが、

Stream Reviver

Reviverは復活させる、蘇らすという意味です。

音楽の流れや、空気の流れを蘇らすのが製品の機能とするところです。


この音が欲しかったんだ!

この音を求めていたんだ!

この音さえ出れば何も要らない!

再生音楽に命を蘇らす装置!

Stream Reviver!


世界がアッと驚きます!

ご期待下さい!

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