ATCは鳴らし難いスピーカーの代名詞のように言われています。そのインシュレーターの貸し出し試聴について相談を頂きました。SCM50やSCM100には以前から興味があったので幾つか質問してみました。
「どんなスタンドをお使いですか?」
『スチール製の専用スタンドを持っているけど、
スクリーンの影になるので使えない』との事。
幾らインシュレーターが優秀でも、
床に直接では結果は自ずと分かっています。
「どれくらいの高さまでなら大丈夫ですか?」
『10センチ高くなる程度ならO.Kです』
同じ江東区にお住まいだという事が分かり、無料電話相談の延長という形で、直接伺って即席クリニックを施す事になりました。今回は、インシュレーターよりも、サウンドステーションの方が良い結果になるだろうと思ったのでSタイプを用意しました。
ラインケーブル、スピーカーケーブル、電源ケーブル等全てがNBSのオンパレードにちょっと圧倒されます。しかし、如何にNBSと言えども、冴えないタップだと本来の実力を発揮出来ないのは誰の目にも明らかです。
隅田川沿いの素晴らしい眺望は住まいとして最高のロケーションです。しかし、音に関しては、スピーカーの左の面と背面が総ガラス張り故に厳しいものがあります。更に難しくしているのは部屋の角度です。直角ではなく84〜85度の変形部屋なので、並の人間ではスピーカーセッティングはお手上げでしょう。
機器及び結線
機器
ケーブル
電源ケーブル
・DS
LINN AKURATE DS/K
←
BMI OCEANIC STATEMENT
↓
デジタルケーブル
AUGLINE Digital Cable SE
↓
・DAC
CHORD QBD 76
←
NBS BLACK LABEL
↓
ラインケーブル
NBS BLACK LABELU
↓
・プリアンプ
MARK LEVINSON 380SL
←
元からのACケーブル
↓
ラインケーブル
NBS SIGNATUREU
↓
・パワーアンプ2台
AMPZILLA 2000
←
直付けACケーブル
↓
スピーカーケーブル
NBS BLACK LABEL
↓
・スピーカー
ATC SCM50PDL
試聴をした上で慎重に決めたい
伺った時には試聴で借りた他社のインシュレーターが二組ありました。満足に至らなかったので、私に相談があったのだとその時点で分かりました。自分でテストした時と同じように『床に直の状態でインシュレーターの音の違いを知りたい』という希望を述べられました。
床暖房のゆるゆるの床では効果半減どころか、実力の1/3も発揮出来ないのは当社の試聴室で嫌というほど知っています。だから、その形での試聴はお断りしました。お勧めではない避けるべき事は、お金を捨てる事にも繋がるのでお互いにとって不幸だからです。それは私のやる事ではありません。
同じお金をかけるなら、今回のようなケースはサウンドステーションの方が遥かに効果を発揮します。何故ならば、サウンドステーションは床暖房の軟な床がきっかけで誕生したその申し子ですから。
サウンドステーションにスピーカーべた置きにも係わらず、気持ちの良い音楽が鳴り始め、T.Cさんは驚きを隠せないようです。
『クラシックがこんな風に鳴るとは思いもしなかった!』
『いや〜驚きました!!!』
『この音抜けの良さには参りました!!』
『一気に音楽になりました!』
『このサウンドステーションは早速頂きます』
『この状態にBIGを入れるとどうなるのですか?』
「入れてみればすぐ結果が判りますよ」
『うわ!? 圧倒的な実力ですね!』
『情報量が一気に増えました!』
「この状態で初めてインシュレーターの力が発揮出来るのです」
『インシュレーターもこのまま購入します!』
『それにしても、サウンドステーションの実力には驚きです!』
『他社とは考え方も構造も全く違いますねェ!』
正式なセッティングに来て欲しい!
私の帰った後、パワーアンプにインシュレーターを入れると更に素晴らしい音になったので、追加でBIG3を6個買いたいとの連絡を貰いました。1個33,000円するので税込みだと20万超えます。買うにはかなり勇気が要ると思いますが、機器のように故障しないので一生道具と思えば安いものです。
ローゼンクランツ製品の魅力に虜となったのでしょう、
『正式なセッティングに来て欲しい!』
との連絡を半月後に頂きました。
今話題沸騰の『”ナイアガラ・ハイブリッド”の試聴と同時に、
壁コンセントをHBL8300BRに交換して欲しい』。
前日の23(土)はメグでそのナイアガラ・ハイブリッドのデモンストレーションをしました。公の前でのお披露目は初めてだったのですが、圧倒的な音楽表現とその生々しい音に皆さん驚いていました。チェット・ベイカーのトランペットと、バリトン・サックスの力強いハーモニーが特に素晴らしかった!
口の悪い事で有名な寺島さんも、
『これは凄い!』 とビックリでした。
ナイアガラ/HBの実力が炸裂!
その余勢をかって、今日のナイアガラ/HBの持ち込み試聴だったので、大体の予想はついていましたが、イイ音が出るとまた違った新鮮さが生まれるのです。普通だったらこのガラスの部屋では良い音を出すのは困難な筈ですが、いとも簡単に部屋中に音楽が響いたのでした。
スピーカーに”音力”が付くと出音その物が変わります。鳴り方が能率の高いスピーカーに似るから不思議です。ある一線を超えると環境の悪さなどもろともしなくなるのです。
その音力が増すにも、電気・振動・気流の三つのパターンがありますが、本件では電源汚染の弊害の改善によるものと思います。この電源配線関係には気の遠くなるほどのカットアンドトライを繰り返して手に入れた技であります。昨今の汚染された電源環境に於いては、そこまで持って行くのは至難の業です。
ナイアガラ/HBは電源汚染にすこぶる強いのです。
当初はベーシックモデルを持ち込む予定だったのですが、これまた直前に売れてしまったものですから、バージョンアップモデルを体験頂くしかなくなったのです。予算は370,000円から一気に20万円近く跳ね上がり555,000円にもなります。
当日は小・中が一緒だったという幼馴染のTさんという方が同席されました。ロックが好きだと仰る。独身貴族のT.Cさんには山の神という難敵がいないので即決でした。最初は凄く慎重だったのに、音楽の女神が微笑み始めた途端に財布の紐は緩くなったのです。
幾ら安くしてくれても、音が悪ければそうはならないのに、びた一文負からないローゼンクランツには男前な金の使い方をしてしまうのです。だから大切にもし、その買い物に誇りが持てるのです。
こんなシーンに出くわす度に、
オーディオ屋はいい音を鳴らして当たり前だ!
つくづく思います。
カイザークリニックで問題点を暴き出し、システム全体の調和を図りつつコンディションの良い音を目の前で再現してしまうので、誰もが納得せざるを得ないのです。カイザーサウンドは日に日にクリニックとセッティング技術を向上させています。
強い使命感と努力によって身に付けたものは横綱相撲の如く安定しています。安心を手に入れる事によって無意味な買い替えを繰り返さなくなります。その点を考慮に入れると、ローゼンクランツ製品は高いようで一番安い買い物だと思います。
要はどれだけの満足が得られたかであります。
加速度組立を試食して貰う
「SCM50の加速度組立」が今日の真打ちと位置づけております。事前に80,000円の見積もりを提示していますが、いかんせんネジの配置換えとトルクコントロールだけだと、その価値を分かって貰い難いので魅力の一端を体験して頂く事を思いつきました。
このスピーカーはトリプル・ワイヤリングが出来る端子装備となっています。スピーカーに直接触れないところ(真鍮製ジャンパープレート4枚とネジ6個)の加速度組立を敢行するのです。若しも、その結果が悪いようであれば本チャンに入るのは止そうと思っています。
取り外した左右のパーツをひとまとめにし、適材配置とカップリングの組み直しをします。ジャンパープレートに関しては上下・裏表の方向を管理し、どちらを上に重ねるのが良いのかイメージを図り綺麗に並べ替えます。
こんな内容のところをウェブで見たり読んだだけの人のほとんどは、オカルトだと思うでしょう。過去の私だったら、いの一番に否定していた筈です。だから人がそんな風に思えども、何一つ嫌に感じる事などありません。
未知なる領域のぶっ飛んだ内容になると、
人とのコミュニケーションが成立しなくなるのは承知しています。
とにかく体験して頂く他ありません!
音楽は感動してナンボです!
結果が全てです!
このスピーカー端子の”加速度組立効果”は絶大でした。その偉大なる変身に驚いたT.Cさんは、SCM50の”加速度組立”を決断したのでした。私にとっては計算通りです。この技法は過去に何度も経験を積んでいるからです。このスピーカーは、普通のスピーカーに比べてネジが多いので効果の程は大いに期待出来ます。
ネジはエネルギーを伝える源
各ユニットには重く強力なマグネットを換装しているので、ネジに掛かる力次第で良くも悪くも振動板のブレに大きく影響します。ボビンに巻かれたボイスコイルのピストン運動が、磁界の中心で真っ直ぐに動くようになると芯を喰った音が出て来ます。
凄いユニットからは凄い音が出て当然なのです。ATCの技術者でさえ聴いた事ないであろう、未体験ゾーンの音を今日は狙ってみたいと思います。最初に手掛けるのは黒いバッフル板を止めてある10本のネジから始めます。
ネジ止めの位置が本当に素晴らしいです。上端・下端部が2本止めとなっていますが、この幅ならばほとんどの人は3ヶ所止めにするでしょう。又、左右に関しても恐らく4ヶ所止めたくなるのが普通ですが、ここでも3ヶ所で済ませています。カットアンドトライを何度も繰り返したのでしょう・・・。この見切りが素晴らしいのです。凄い人は色々な所に居るものです。
どこがどう素晴らしいのかというと、4隅のバッフルのエンドからネジの位置が振動放出に於いてちょうど良い塩梅なのです。皆さんユニットの性能にばかり目が行きがちですが、振動にうるさいカイザーから見ると両端のネジ位置こそが大事なのです。
そこがビシっと決まっていると、箱の縦・横・奥行きとの振動の折り合いが良く、音の立ち上がりや消え際のデリカシーに効いて来るのです。勿論、抑揚表現にもしっかりと寄与します。たかがネジと思うでしょうが、ネジはエネルギーを伝える源なのです。車のドライブシャフトと同じようなイメージを持って貰って構いません。
ネジのトルク管理は音質に与える影響大
一般のスピーカーと比べてこの方式は、ネジのトルクコントロールを操れる者にとってはこの上ない有難い機能なのです。その逆も有り得る訳で、良くも悪くも玄人好みのスピーカーである事には間違いありません。
こうしたところに真の原因がある事に気付かず、
上手く鳴らない!
鳴らし難い!
大パワーでなければ駄目だ!
といった誤った批評が大手を振って歩くのは悲しいものです。
どこを観ているのか!
もっとよく診ろ!
と言いたくなります。
カイザーの格言で言うと、
「鳴るように出来ている物を鳴らないようにしているから鳴らない」
と言う事になります。
指先の感覚を研ぎ澄ませるトルクコントロール
木と木のネジのトルクコントロールは柔らかいが故に、手応え感を知るのに指先の感覚を研ぎ澄ます必要があります。六角レンチは”てこの力”で幾らでも回るので、どこまでも回してしまう危険性を孕んでいるのです。ユニットを取り付けているバッフルのネジトルク調整が終わると、加速度組立の半分は終わったようなものです。
次にエネルギーを受け持つウーハーのトルクコントロールです。増し締めしている最中に指先に伝わって来る手応えが一般の物とは違います。普通は強いとか重いといった感覚なのですが、ATCはタフ=強靭という言葉がピッタリです。
幸いにもこの個体はユニットのエネルギーの方向が左右揃っているので、ユニットの角度調整の必要はありません。その時点でこのスピーカーは大当たりであります。だから加速度組立を最終的に終えた時点で大化け間違い無しです。
残りのミッドとツイーターはネジの数も少ないのでウーハー程の難易度ではありません。ここらあたりから音楽を鳴らしながら調整します。微妙な音の聴き分けが要るからです。
上手く行くとツイーターから迫力ある低音が聞こえてくる時があります。それには元々のネットワークの完成度が高くなくてはなりません。これは波長の大小を問わず、ミクロマクロ方向に振動波動の往来が成されて初めて起こる現象です。
スーパーツイーターを追加すると低域の鳴り方が変わるのは、この逆バージョンで現象としては同じであります。このスピーカーを調整していてその兆しが見えたので、ワクワクした感覚が私の内側から湧いて来ます。
完成時が楽しみ!
このスピーカーはツイーターのトルク調整を済ませたあとにもう一仕事あります。裏面のバインディングポスト・パネルです。ここの端子部を初っ端にやったわけですが、その時の感触からして化けに化けると睨んでいます。
スピーカーの背後に回り取り掛かろうとしたその時です・・・
有り得ない程生々しい音が耳に飛び込んで来るではありませんか・・・
加速度組立の効果が炸裂し始めています。
問題だとされていた筈のガラス張りの壁面がプラスに転じ始めているからです。反射率が高いという事は、取り込むタイミング次第ではエネルギー効率が高くなる訳です。
ここしかない!
今しかない!
長さと速さの極意を極めるのです!
緩急と強弱の多彩な表現に繋がります!
これぞ、「振動の時間軸」と「電気の時間軸」と呼んでいます。
「音のカラクリ」と「オーディオの真髄」を説いて歩く
かくして日本全国どこへでも出向き、「音のカラクリ」と「オーディオの真髄」を説いて歩くのです。天動説から地動説へ変わったように・・・。お陰を持ちまして、認めて下さる方の数もかなりに上るようになりました。
'12春に上海へオーディオクリニックに行った頃からカイザーサウンドに対する業界誌の見方に変化が現れたようです。それもその筈、中国の有名なオーディオ誌である「現代音響」の189、190、191の3号に渡って私の事を7ページ、6ページ、8ページと誌面中一番大きな扱いで特集を組んだからです。外圧効果となったのかもしれません。
オーディオアクセサリー誌も、私のクリニック及びセッティング技術を二度取り上げてくれましたし、オーディオベーシックにも大きく載りました。目の前でネジの加速度組立やカイザーセッティングを行い結果を出し続けたからです。
十数年前に「オーディオの将来を予見する」という内容をウェブに残しました。ケーブル、インシュレーターの時代が一段落した次は、ルームチューニングとセッティングの総合力が問われる事になります。
セッティング技術に於いてはカイザーサウンドが先頭を走っていますが、ルームチューニング(気流の問題)でも”カイザーゲージ”を発表し、一歩も二歩も進んだ理論を展開しております。
近々「Stream Reviver」という名のルームチューニングの決定版を発表しますので、ご期待頂きたいと思います。従来の物は、吸音、反射、拡散の三つがテーマとなっています。これは初歩の初歩、小学校レベルの問題です。
芸術家の表現は速度変化に真似の出来ないところがあります。その超一流の芸術家の演奏技術の深層部まで引き出すのが、「Stream Reviver」の凄いところです。