トップカイザーサウンドマランツPA-01モディファイ実験記安っぽい作りのPA01から、信じられない音が!

安っぽい作りのPA01から、信じられない音が!




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 Sent: Saturday, January 11, 2003 4:43 PM
 Subject: RK-PA01を試聴して


 貝崎静雄 様

 本日、PA-01の試聴機を宅急便に出しました。ご指定の12日の午前中にそちらへ到着いたします。長いことお借りして、本当にどうもありがとうございました。弟ともども、試聴できましたこと、また、新たな愛機にめぐりあえましたこと、心より感謝申し上げます。いずれ、春先になりますが、購入させていただきますので、そのときはよろしくお願いします。

 ここに、感謝の気持ちを込めて感想文をお送りします。文中、不適切な表現がありましたら、どうぞお許しください。


 PA01モディファイの試聴機がやって来た。

 はやる気持ちを抑えて梱包をとき、蛍光灯の下に置く。

 な、なんだ、これは・・・。チャチな作りだなあ。ガックリ。

 シャーシをノックしてみる。

 うわ、なんちゅう安っぽい音。

 黒くて、内部がスケスケのベコベコだ。

 見て、フロントの電源スイッチ。

 なにこれ!?笑ってしまった。

 このタイプのスイッチならどこかで見たぞ。

・・・思い出しましてございます、それは我が家の便所のスイッチじゃないか。

 あいつは白かったが、こいつは黒い。

 これがアンプのスイッチとはねぇ。

 それから、ノブ。2つしかついてない。

 セレクターとヴォリュームだけ。

 見て、このノブの指標。

 ダイヤモンドチップ付きの丸ノコか何かで切れ込みを入れただけだよ。

 これがPROFESSIONALというものなのか。

 はっきり言って、ダサイ。


 これでは、わが、マランツPM-14の方に軍配が上がろうというものだ。やっぱ兄機だもンな。その兄機PM-14を外し、弟機PA01に換える。スピーカーケーブルとピンケーブルをつないで、いざスイッチON!青い光がピカピカピカピ〜ンでアイドリング開始。

 音出しはまだだ。しばし待とう。その間に、取り寄せたばかりのPB-DADDYで念入りにセッティングをしておくとするか。準備完了。・・・つくづく外見の悪いアンプだ。PB-DADDYも、もっとオシャレでカッコイイ高級機を乗せてもらいたいだろうに。

 ますます不安になってくる。(ノック2回)おい、俺がどんな音を欲しがっているか分かっているのか。しかし、カイザーさんは100万円以下なら文句なしにナンバー・ワンだと言っていた。

 DADDYのマイルドで腰のある響き、PB-JRU(H)での度肝を抜かれた体験、『カイザー・サウンド』でかかえたナイアガラの重さ・・・よもや隊長のお言葉にウソ偽りはあるまい。

 そして静かに鬼太鼓座の『富嶽百景』をCDプレーヤーに乗せた。鳴った。初めは違いがよく分からなかった。PM-14もPA01も同じマランツである。同じ傾向の音だと思った。


 が、数分たって、何かが吹っ切れた。

 途端、なんというエネルギッシュな表情!。

 ヴォリュームをそれほど上げていないのに音がこちらへ目掛けて飛んでくること!。

 一音一音が熱いメッセージを持っている。

 ピンボケしていない。

 華奢だった低域が少し逞しくなった。

 そして、何より、気持ちがいい。

 B&WのN804からこんな御機嫌なサウンドが出てくるとは思わなかった。

 嬉しくなったが、しばらく落ち着いてられなくなった。


 じゃあ、第3曲「富嶽百景」の太鼓の桴のぶつかり合いは?。

---目から星が出そうなほどの炸裂ぶり。

 その響きが彼方へと消えていく。

 荒っぽいほどの生気。熱気。


 じゃあ、第5曲「三国」の三味線パワーは?。

---三味線の撥のキレの良いことと言ったら!ピシピシ来る。身を打たれるようだ。

 そうして、ライムソーダみたいにスカ〜ッと爽快。

 ぶっ飛びのスピード感だ。


 じゃあ、CDをかえて、チャイコフスキー『1812年』の1775年製ブロンズ・キャノンは?。

---キャノン砲の砲声がブレてない!。

 細身のN804だからスケールの大きさとパワーは今一つだが、音の芯をよく捉えている。


 じゃあ、ベートーヴェン『ウェリントンの勝利』の金管の強奏は?。

---青空をぶち抜くような、破綻のない高域の伸び。

 ウオ、天にも昇る気持ち!。

 金管なのに金属的でない濃密な響き。

 楽器の音とは思えない。


 じゃあ、HOLLY VALANCEの『KISS KISS』冒頭の「んまっ!」というKissの音は?。

---彼女の唇の肉厚や、動きまでわかりそうなリップノイズだ。

 したたかな表現だこと。


 じゃあ、民族音楽『ブルンジの大いなる響き』第1曲「イナンガの伴奏による囁き歌」は?。

---酋長と思しき男のハスキーボイスのなんたるリアリティ!。

 そして、その男の息づかいの不気味なこと。

 口臭まで臭ってきそうだ。

 PM-14は完全にやられた。

 PA01は生意気だ!ノックしてやった。

 クールな二枚目はホットな三枚目に負けるということか。


 お正月休みに弟が戻ってきた。弟は、最近、映像用のスクリーンを購入したらしい。次にプロジェクターを買うのだと言っていた。弟は私よりもずっと前から、カイザーさんを知っており、PA01モディファイに好奇の目を向けていたが、実際にはまだ聴いたことがなかった。

 そこで準備万端、「PA01があるぞ。聴いてみないか?」と弟を誘い、例の『富嶽百景』をかけた。すぐにPA01の実力が分かったらしく、「たまらんのう」とつぶやいた。

 やはり、私と同じく、いろいろなCDをかけ始め、オーケストラの響き、ヴァイオリンの音色、ピアノの打音、コーラスのハーモニーなどを聴き終わって、一言「迷わすのう。」どうやら、プロジェクターを買う意志がぐらついてきたらしい。

 次の日、両親にも聴かせた。セリーヌ・ディオン、鬼太鼓座『怒涛万里』、ストラヴィンスキー『春の祭典』、フラメンコなどである。父は「すぐそこで演奏しているような」と言い、母は「のどまめまで聞こえる」、「気持ちまで伝わってくる」、「全然うるさくない」と言った。

 “うるさくない”は、弟が音質を判断する際の最初のチェック事項である。私はフラメンコの足音を聴いていて、靴とステージの間でホコリが光に舞っているような錯覚を覚えた。

 そして、弟が最後にかけた宇多田ヒカルの『SAKURAドロップス』が吐く息のリアルなこと。宇多田ヒカルが中腰になってリズミカルに歌っている様が見えるようだ。

 とうとう弟が叫んだ。「くそ〜!こうなったら意地でもPA01を買うぞ!」「じゃあプロジェクターは?」「それも買う!」そして、カミさんに手を合わせておねだりをしていた。

 私もすっかりPA01モディファイが好きになってしまった。正直のところ、N804も、良きパートナーを得て大喜びなのではあるまいか。全く、N804のためにあるアンプとしか思えないのだ。

 シャーシがスケスケでベコベコなのは、コストをかけずに熱をうまく逃がすための方法であり、ノブが2つだけなのは、余計な回路を省いてひたすら高音質を追求した結果なのだ。

 また、その便所のスイッチのほうがONにしたぞという実感がわく。それに、私は日ごろ、部屋を真っ暗にしたり、ブラックライトを点けたりして聴いている。そのほうがステレオ装置の存在を忘れて音楽に集中できるからだ。

 そうして大切なイメージが闇に投影されていく。そんな状態であれば、アンプの形がどうなっていようと構わない。音楽も暗闇でこそ味がわかるというものだ。

 暗闇に映えるPA01のブルーの光。なかなか風情がある。

 今、心をオニにして、試聴機を返却した。今ごろN804はすっかり元気をなくして部屋でさびしく佇んでいることだろうな。春先までの辛抱だからね。ちょっとだけ、もうちょっとだけだから、兄機で我慢しててね。

 カイザーさんも罪だなあ。


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